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【ウマ娘と名馬】悲鳴を歓声に変えたヒーロー

スポニチ
  • 2024年04月26日(金) 12時00分
 今、歴代の名馬に再びスポットライトが当たっている。クロスメディアコンテンツ「ウマ娘 プリティーダービー」が火付け役となった近年の競馬ブーム。スポニチアネックスでは、レジェンド騎手・武豊が「相当に詳しい」と舌を巻いたウマ娘の緻密なストーリー設定と、モチーフになった史実の共通点を読み解く新企画がスタート。第1回は今週末に行われる「天皇賞・春」を2度制した“黒い刺客”ライスシャワーを取り上げる。

 ライスシャワーは92年菊花賞、93&95年天皇賞・春と長距離G1で3勝を挙げた名ステイヤー。牡馬としてはかなり体が小さなサラブレッドで、天皇賞・春の最低馬体重勝利記録(430キロ)を保持している。「ウマ娘」のライスシャワーは身長が145センチで、同期のミホノブルボン(160センチ)やマチカネタンホイザ(155センチ)と比較しても小柄に設定されている。一方で、ゲーム内ではライスシャワーが見た目に反して大食いである描写が見られる。朝食に「ロールパン5つに、にんじんサラダ、にんじんハンバーグ、ベーコンと目玉焼き。ミネストローネとデザートのゼリーも」食べたにもかかわらず、授業中にお腹が鳴ってしまうことも。ライスシャワーの大食漢ぶりは、菊花賞の3日前(92年11月5日)のスポニチ紙面でも「追い切りの疲れも見せずに旺盛な食欲。“ブルボンに立ち向かうためには食い込むしかない”とばかりに鬼気迫る食べっぷり」と写真を添えて伝えられている。

 ゲーム内のメインストーリー第1部第2章「小さながんばり屋」はライスシャワーが主人公。菊花賞ミホノブルボンを、天皇賞・春メジロマックイーンを破るまでの軌跡がドラマチックに描かれている。

 ブルボンは史上2頭目の無敗でのクラシック3冠制覇、マックイーンは史上初となる天皇賞・春3連覇が懸かった“1強ムード”で、菊花賞にいたってはブルボンの3冠達成を祝福するバルーンが事前に用意されていたほど。ライスシャワーの勝利はいずれも大記録を阻止する形に。レース結果を伝えるスポニチ紙面では、メイン原稿の主語は負けたブルボンとマックイーン。見守った観客の描写として「悲鳴」「ため息」という言葉が共通して使われている。当時のこの競馬場の異様な雰囲気は「ウマ娘」のストーリーにも落とし込まれている。

 ブルボンやマックイーンが現役を引退し、今度は主役として競馬界を牽引することを期待されたライスシャワーだが、マックイーンを破った天皇賞後は極度の不振に陥る。1番人気に4度支持されるも全敗。骨折による長期休養も重なり、長らく勝利から遠ざかる。

 丸2年ぶりの勝利を目指して出走した95年の天皇賞・春。これまではブルボンやマックイーンなど有力馬を徹底マークしてゴール寸前で競り落としてきたライスシャワーだったが、この日は「ライスが自分でスッと上がっていった」(的場均騎手)と残り1000メートルを待たずに先頭に立つ。思いがけない積極策で観客の視線を独占。最後は後続の追い上げを僅か16センチしのいで真っ先にゴール板を駆け抜けた。

 そのレース後の様子が描かれているのが、ライスシャワーのサポートカード「『幸せ』が舞う時」のイラストだ。

 「勝利を願ってくれるのは、ただ1人だけ。自分だけだと、少女は思い込んでいました。けれど全力で走りぬいた少女を迎えたのは、まるで高い高い青空から舞い落ちるような、たくさんのたくさんの声援でした」(同サポートカードのエピソードより)

 このレースの結果を報じるスポニチ紙面(95年4月24日)は「文句なし 日本一のステイヤー」の見出しで、京都競馬場が悲鳴やため息ではなく、「歓声」に包まれたことを報じている。東西の垣根が大きかった時代にもかかわらず「まるで関西馬のような人気」と京都競馬場に集まった大観衆がライスシャワーの復活劇に熱狂した様子を伝えた。その2カ月後、ライスシャワーは現役最後のレースとなるグランプリ宝塚記念に堂々ファン投票1位で選出。正真正銘のヒーローとなった。

 さて、「第169回天皇賞・春」が行われる4月28日、京都競馬場では第10競走に「ライスシャワーカップ」が組まれている。JRAウルトラプレミアムの対象のため、全投票法の払戻率を80%に設定した上で、全投票法の払戻金に売上げの5%相当額を上乗せして払戻が行われる。競馬ファンも、そして「ウマ娘」ファンも熱狂する素晴らしいレースになることを期待したい。

スポニチ

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