今、歴代の名馬に再びスポッ
トライトが当たっている。クロス
メディアコンテンツ「ウマ娘 プリティーダービー」が火付け役となった近年の競馬ブーム。スポ
ニチアネックスでは、レジェンド騎手・
武豊が「相当に詳しい」と舌を巻いたウマ娘の緻密なストーリー設定と、モチーフになった史実の共通点を読み解く新企画がスタート。第1回は今週末に行われる「
天皇賞・春」を2度制した“黒い刺客”
ライスシャワーを取り上げる。
ライスシャワーは92年
菊花賞、93&95年
天皇賞・春と長距離G1で3勝を挙げた名ステイヤー。牡馬としてはかなり体が小さなサラブレッドで、
天皇賞・春の最低馬体重勝利記録(430キロ)を保持している。「ウマ娘」の
ライスシャワーは身長が145センチで、同期の
ミホノブルボン(160センチ)や
マチカネタンホイザ(155センチ)と比較しても小柄に設定されている。一方で、ゲーム内では
ライスシャワーが見た目に反して大食いである描写が見られる。朝食に「ロー
ルパン5つに、にんじん
サラダ、にんじんハンバーグ、ベーコンと目玉焼き。
ミネストローネとデザートのゼリーも」食べたにもかかわらず、授業中にお腹が鳴ってしまうことも。
ライスシャワーの大食漢ぶりは、
菊花賞の3日前(92年11月5日)のスポニチ紙面でも「追い切りの疲れも見せずに旺盛な食欲。“ブルボンに立ち向かうためには食い込むしかない”とばかりに鬼気迫る食べっぷり」と写真を添えて伝えられている。
ゲーム内のメインストーリー第1部第2章「小さながんばり屋」は
ライスシャワーが主人公。
菊花賞で
ミホノブルボンを、
天皇賞・春で
メジロマックイーンを破るまでの軌跡がドラマチックに描かれている。
ブルボンは史上2頭目の無敗でのクラシック3冠制覇、
マックイーンは史上初となる
天皇賞・春3連覇が懸かった“1強ムード”で、
菊花賞にいたってはブルボンの3冠達成を祝福する
バルーンが事前に用意されていたほど。
ライスシャワーの勝利はいずれも大記録を阻止する形に。レース結果を伝えるスポニチ紙面では、メイン原稿の主語は負けたブルボンと
マックイーン。見守った観客の描写として「悲鳴」「ため息」という言葉が共通して使われている。当時のこの競馬場の異様な雰囲気は「ウマ娘」のストーリーにも落とし込まれている。
ブルボンや
マックイーンが現役を引退し、今度は主役として競馬界を牽引することを期待された
ライスシャワーだが、
マックイーンを破った天皇賞後は極度の不振に陥る。1番人気に4度支持されるも全敗。骨折による長期休養も重なり、長らく勝利から遠ざかる。
丸2年ぶりの勝利を目指して出走した95年の
天皇賞・春。これまではブルボンや
マックイーンなど有力馬を徹底マークしてゴール寸前で競り落としてきた
ライスシャワーだったが、この日は「ライスが自分でスッと上がっていった」(
的場均騎手)と残り1000メートルを待たずに先頭に立つ。思いがけない積極策で観客の視線を独占。最後は後続の追い上げを僅か16センチしのいで真っ先にゴール板を駆け抜けた。
そのレース後の様子が描かれているのが、
ライスシャワーのサポートカード「『幸せ』が舞う時」のイラストだ。
「勝利を願ってくれるのは、ただ1人だけ。自分だけだと、少女は思い込んでいました。けれど全力で走りぬいた少女を迎えたのは、まるで高い高い青空から舞い落ちるような、たくさんのたくさんの声援でした」(同サポートカードのエピソードより)
このレースの結果を報じるスポニチ紙面(95年4月24日)は「文句なし 日本一のステイヤー」の見出しで、京都競馬場が悲鳴やため息ではなく、「歓声」に包まれたことを報じている。東西の垣根が大きかった時代にもかかわらず「まるで関西馬のような人気」と京都競馬場に集まった大観衆が
ライスシャワーの復活劇に熱狂した様子を伝えた。その2カ月後、
ライスシャワーは現役最後のレースとなる
グランプリ宝塚記念に堂々ファン投票1位で選出。正真正銘のヒーローとなった。
さて、「第169回
天皇賞・春」が行われる4月28日、京都競馬場では第10競走に「
ライスシャワーカップ」が組まれている。
JRAウルトラプレミアムの対象のため、全投票法の払戻率を80%に設定した上で、全投票法の払戻金に売上げの5%相当額を上乗せして払戻が行われる。競馬ファンも、そして「ウマ娘」ファンも熱狂する素晴らしいレースになることを期待したい。
スポニチ