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【地方競馬】強敵相手の経験は必ず活きる、高みを目指すチャレンジを

  • 2024年05月28日(火) 18時00分
 3歳ダート三冠の初戦・羽田盃JpnIは、雲取賞JpnIII・2着で出走権を得たアマンテビアンコが優勝。逃げの手を打ったアンモシエラが渋太く食い下がり、直線のデッドヒートは見応えがあった。

 ブルーバードカップJpnIIIを制したアンモシエラは、京浜盃JpnIIでサントノーレの2着に健闘して羽田盃JpnIに駒を進めたが、それまでの戦法と違うレースで場内を沸かせた走りは鳥肌が立った。

 アマンテビアンコは、白毛馬として圧倒的な人気を誇る。オーストラリアの白い砂は、勝負服につきづらいことで騎手たちに評判が良い。不良馬場でのレースとなったが、白い馬体がほぼ汚れることなく、トゥインクルレースに輝きを放つ走りは、新たな歴史を刻むにふさわしいスターホースと言えよう。

 JRA勢が断然という戦前の評価だったが、最後方を追走して直線に懸けた船橋のフロインフォッサルが3着に食い込み、クラシックチャレンジを勝って出走権を獲得した大井のムットクルフェが5着と、2頭の地方所属馬が入着した。何度も書いてきたが、挑戦なくして発展はない。羽田盃JpnIに出走した地方所属馬には、チャレンジスピリッツに最大限の敬意を表すとともに、入着した馬たちの経験は、東京ダービーJpnIに活きるはずだ。

 羽田盃JpnIの枠順が発表された時、8頭の少頭数に唖然とした。翌週の船橋で行われた東京湾カップが12頭立てだったが、1月のブルーバードカップJpnIII(9頭立て)とニューイヤーカップ(10頭立て)の雰囲気と一緒である。優勝を考えれば、JRA勢と対戦する羽田盃JpnIより、地方重賞の方が相手関係で楽だとは思う。

 しかし、どのレースでも勝つ馬は基本的に1頭しかいない。東京湾カップの優勝馬は、東京ダービーJpnIの優先出走権が与えられることから、東京ダービーJpnIを目指す上でも重要なレースであることは承知している。しかし、羽田盃JpnIに出走した地方所属馬は、上位3頭に東京ダービーJpnIの優先出走権が与えられるので、出走権の獲得なら羽田盃JpnIの方が幅が広い。

 雲取賞JpnIIIはフルゲートの16頭が揃ったが、それ以外の地方競馬で行われた3歳中距離のダートグレードは一桁の出走頭数ばかり。高知と兵庫の関係性もそうだが、賞金と地区レベルの相関性がどんどん崩れてきているのは、チャレンジスピリッツが物語っている。敢えて何度も書かせて頂く。

 ケンタッキーダービーG1で、フォーエバーヤングが3着惜敗、テーオーパスワードは5着に追い込んだ。世界で権威あるレースに挑戦し、敗れたとはいえ素晴らしい走りを見せた2頭に対し、日本のみならず、世界中のホースマンが日本馬の活躍を讃えていた。JRA所属馬は、海外のビッグレースを選択肢に入れる。世界を目指すホースマンがいるからこそ、日本の競走馬のレベルが一気に上がることは自明のことだろう。

 これを地方競馬に照らしてみる。地区レベルの差には各々で様々な意見があることは百も承知の上でも、賞金や各馬のレベルを考えてピラミッドを形成した際、南関東がその頂点に立つことに異論はないだろう。それ以外の地区は、ダートグレードの他、地方全国交流で南関東を頂点とする賞金の高いレースを目指す。各地で行われる地方全国交流なら、上のレベルに立つ地区から遠征する馬たちに対して、地の利を活かして迎え撃つためにも、遠征によって実力差を理解することもできる。

 地方競馬におけるピラミッドの頂点にいる南関東は本来、ダートグレードJRA勢を迎え撃つ立場にいることが求められる。そのために、可能な限りJRAの舞台へも積極的に遠征し、芝適性なども含め様々な経験から得るべきだと思っている。しかし、遠征はもちろん、地元で行われるダートグレードですら出走意思のある関係者が少ないことは、何とも残念でならない。遠征経験で得たことは、苦いことも良いことも、後に必ず活きる。

 兵庫の新子雅司調教師は、2018年黒船賞JpnIIIをエイシンヴァラーで制した。エイシンヴァラーは、黒船賞JpnIIIの前に黒潮スプリンターズカップに遠征したが、この時は雪の影響で輸送に時間を要し、万全の状態で挑めなかった。この経験から、黒船賞JpnIIIは前日に高知競馬場へ入厩し、勝利を得た。その後、遠征を積み重ねて得たノウハウから、イグナイターをJpnI馬へと導いた。

 北海道所属馬たちが各地に遠征して好結果を出しているのも、海を渡ることをハンデと考えず、そこで得る経験を大切にしていることが挙げられる。2歳戦ばかりがクローズアップされる北海道だが、シルトプレアナザートゥルースなど、最近は古馬も本州のダートグレードで入着している。高知の馬たちは、賞金が厳しい時代にダートグレードへ積極的に挑戦し、入着を目指して強い馬を導入することに力を注いだ時期があった。その時の経験が、今につながっている。

 ダート競馬がクローズアップされている今、地方競馬がもっと頑張らなければならない。そのためにも、頂上決戦であるJpnIで少頭数の競馬が目立つ状況が続くことはあってはならない。

(文:古谷剛彦)

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