世の中の真理を「変化し続けること」だと考えた、とある古代のギリシャ人は、「同じ川に二度入ることはできない」という言葉を残した。昨日と今日では違う水が流れているからだ。競馬も似たようなもので、レース体系は毎年ほぼ同じ繰り返しだが、年々メンバーが更新されていくため、「同じレースを二度見ることはできない」。新しい世代の馬たちの台頭は、やはり競馬の醍醐味のひとつだろう。
シルトプレをいとも簡単に交わし去った、
コスモバルク記念の
ベルピットは、まさに新たな時代の幕開けを宣言するかのようだった。初の古馬相手を全く問題にせず、門別白砂の1800mを最速タイムで駆け抜けた今季緒戦を思えば、ある意味、当然の結果とも言えるだろう。3歳三冠馬となった昨年より、遥かに強くなっている。ここも楽勝するようだと、もうしばらく地元で負けることはないように思う。
ひとつ下の世代からとんでもない実力馬が現れて、
シルトプレとすると面食らったような格好だが、そう易易と世代交代を認めるわけにもいかない。唯一残された逆転のカギは、レースにおける
ベルピットとの位置関係である。
コスモバルク記念では、
ベルピットの出負けもあり、意図せず逃げる形になった。ただ、これまで逃げた経験もないうえ、道中はすぐ後ろの
ベルピットに常に操縦桿を握られているような状況。ペースを作らされた形で、能力を全部出せたとは言えまい。前に目標を置いて運ぶ、この馬のいつものパターンでレースをすれば、自身のパフォーマンスは数段上げられるはずだ。
コスモバルク記念2着で存在感を示した
スワーヴアラミスも、当然、圏内の1頭である。それに加え、移籍緒戦となる
ケイアイパープルの実力もチェックしておきたい。ダート
グレードを2勝しており、
JRA重賞でも連対歴がある。実績から推測するに、少なくとも
スワーヴアラミスと同等レベルの走りはするはずだ。
新世代の勢いvs年長馬の意地。勢力図が完全に書き換わったのかどうか、このレースでその結論が出そうである。
(文:競馬ブック・板垣祐介)