東京ダービーJpnIは
ラムジェットが6馬身差、
関東オークスJpnIIは
アンデスビエントが7馬身差の圧勝を演じた。
東京ダービーJpnIは
サトノエピックが2着だったので、京都ダート1900mで争われた
ユニコーンステークスGIIIの1、2着馬で本番も決着し、3着
アンモシエラは
ブルーバードカップJpnIII制覇から
京浜盃JpnII、
羽田盃JpnI、
東京ダービーJpnIと新ダート体系を駆け抜けた女傑として、その名を刻んだ。
東京ダービーJpnIでは、地方所属馬で唯一、掲示板に食い込んだのは高知の
シンメデージー(4着)。4コーナーでグングン位置を上げていくシーンは、
JRAを主軸に置くファンにもインパクトを与えたのではないか。また、
関東オークスJpnIIは2着
ミスカッレーラから7着
スピナッチバイパーまで地方所属馬が占めた。その中で、高知の
グラインドアウトは、内を突いて
ミスカッレーラと2着争いを繰り広げた。3歳ダート最高峰の戦いで、高知所属馬の頑張りは目を見張るものがある。
地方競馬の賞金は、
ピラミッドの頂点が南関東にあり、兵庫が2番目に位置する時代が続いていた。西日本エリアでは、
イグナイターの活躍もあり、今でも「西なら兵庫が最も強い」と感じるファンは、当然多いはずだ。しかし、高知のレベルアップは急加速中である。今年、兵庫(園田・姫路)で行われた地方交流(西日本ブロックの交流も含む)で、高知所属馬は
リケアサブルが兵庫ユースカップと
ネクストスター西日本を、
シンメデージーが西日本クラシックを制し、
トランセンデンスは白鷺賞で2着に食い込んだ。
また、
グラインドアウトは佐賀遠征で
花吹雪賞と
ル・プランタン賞を連勝し、佐賀の重賞では他にも、
アンティキティラが佐賀
ヴィーナスカップで兵庫勢を一蹴している。高知唯一のダート
グレードである
黒船賞JpnIIIは、後に
かしわ記念JpnIも逃げ切った
シャマルには及ばなかったものの、
ヘルシャフトが2着に追い込み、地方最先着を果たした。高知所属馬は、全国にその名を轟かすまでに発展している。
その背景には、最下級条件の1着賞金が9万円という、どん底を見た時期を乗り越え、今や最下級条件の1着賞金では高知が兵庫を上回る(高知C3=60万円、兵庫C3=56万円)までに成長したことがある。また、2歳馬の入厩がほぼなかった時は当然2歳重賞もなく、古馬の格付けに編入されるという時代もあった。しかし2009年度(2010年1月)に
金の鞍賞が復活した後、前年より2倍以上の1着賞金140万円となった2016年、生え抜きの
フリビオンが優勝。
その後は着実に賞金がアップし、近2年の1着賞金は800万円となった。2022年優勝馬の
ユメノホノオが高知三冠馬となり、昨年の覇者である
プリフロオールインは現在、二冠馬となっている。このように、賞金額の変遷によって、高知に良い馬を入厩させたいと思うオーナーが確実に増えていることは間違いない。
そして、個人的に感じている高知の意識の高さは、レースラップをライブで把握できるようにしたこと。以前から、場内実況アナウンサーの橋口浩二さんは、1コーナー地点にあるハロン棒で
ストップウォッチを押し、1400mなら前半2F、1600mなら前半3Fのラップタイムを
アナウンスしていた。ペースを感覚だけでなく、実際の数字に照らし合わせることで、騎手と調教師に時計の重要性を促す効果がある。
私がホッカイドウ競馬で取材をする際、騎手や調教師から「さっきのレース、ペースはどうでしたか?」と聞かれ、自分が採ったレースラップを見せることがあるが、彼らはこれで乗ったor観た感覚をより正確につかみ、次なるレースに活かしているのだろう。
南関東はレースラップが公式で発表され、岩手は専門紙の記者が1F毎のレースラップを計測し、上がり3Fはもちろん、各馬の前半3Fも南関東、北海道、岩手の専門紙に反映されている。しかし、西日本の専門紙は、前半3Fが掲載されているところがない。レースラップも、一部のレースで掲載されていることはあっても、基本的にはないに等しい。
JRAでは各場のデータはもちろん、馬場状態など多くの情報をオープンにしている。そのファンに
地方競馬にも目を向けてもらうために、同等とまでいかなくても、より近い情報公開を努力する必要がある。どの主催者も、この点に関してはまだまだ至らない点は多い。
ただ、YouTubeなど配信事業に関しては、
JRA以上に進んでいる面もあり、これからもっと進化していく可能性を秘める。その中にあって、西日本エリアが前半ラップに関して、情報提供が少ないことは残念でならない。専門紙も人員の問題など、様々な課題もあり、すべてを求めることが難しいのは百も承知である。
しかし、新ダート体系によるダート競馬の発展を考えた時、地区による情報の格差はないに越したことはない。高知のように、主催者が努力をしてできる面もあり、良いところは各主催者も真似て欲しいと思う。
(文:古谷剛彦)