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【佐賀競馬】22歳の生産者、阿蘇での育成──九州産馬と佐賀競馬に新たな風

  • 2024年06月28日(金) 09時00分
 九州の馬産地と佐賀競馬に新しい風が吹いている。

 6月18日、鹿児島県で行われた九州1歳市場で売却総額が過去最高の7290万円(税抜)を記録した。九州軽種馬協会の柏木務会長は「昨年、売却総額が過去最高でしたが、今年はそれを上回る総額で、生産者も喜んでおりよかったです」と話した。

 最高価格はスマイルヴィオラの2023(牡、父ネロ)の760万円で、北九州記念を制したヨカヨカの馬主でもある岡浩二オーナーが落札した。近年は他にもイロゴトシ中山グランドジャンプを連覇するなど、九州産馬の活躍に注目が集まっており、それがセリの活況にも繋がったと言えるだろう。

 その会場でひときわ注目を集めたのは吉永彩乃氏。22歳の若手生産者で、今年、初めて生産馬をセリに上場させた。「実家では牛を飼っていて、子供の頃に祖父がポニーを飼ってきてそれに乗っていた」のが馬との出会い。その後、ジョッキーベイビーズでは九州地区代表として3度、東京競馬場での決勝レースに出場。斎藤新騎手が優勝した2013年、角田大和騎手が優勝した14年でともに3位だった。当時から「馬が大好きで、馬の仕事がしたい」と考えており、北海道の育成牧場で1年間働いたのち、実家のある九州に帰郷。いまは牛と繁殖牝馬を飼い、面倒を見る日々だ。

 上場したレモンソーダの2023(牡、父スクワートルスクワート)が生まれた時は「(母馬が)朝ごはんを食べているな、と思って、次に見た時にはもう仔馬の脚が出ていました。スッと生まれてくれて安産。私は見守るだけでした」と振り返る。セリに向けては宮崎県の牧場に預けていたため、当日は「ちょっと見ない間に大きくなっていて、緊張します。可愛くて愛着が湧きます」と目を細めると、仔馬の晴れ舞台に向けてたてがみを三つ編みに結った。

 迎えたセリは150万円で落札された。ハンマーが下りた瞬間、笑顔で一礼をした吉永氏。その後は見守った牧場や競馬関係者らから「おめでとう」「よかったな」と労われ、笑顔の記念撮影が行われた。

 また、ヨカヨカイロゴトシなど多くの活躍馬を送り出す本田土寿氏は近年、阿蘇地方に分場の高森ヒルズを建設。この日、上場された1歳馬たちは標高800mを超える分場で中期育成された1期生たちだった。「離乳前から分場で過ごしている1歳馬もいて、本場よりも広い分、運動量が格段に上がっています。お尻やトモのハリ、肩の出などが違いますね」と本田氏は手応えを掴んでいる。

 こうして活気づく馬産地・九州をさらに盛り上げようと、佐賀競馬では今年、新たな重賞を実施する。11月4日JBC当日に2024九州産グランプリ(地方全国交流、九州産3歳以上、ダート1800m)が組まれているのだ。昨年の佐賀皐月賞を勝つなど佐賀競馬で活躍するネオシエルの生産者・吉野政敏氏の長男・新作氏は「競馬は順調にいくか未知な世界ですけど、生産馬が出走できればいいですね」と期待を寄せる。

 また、佐賀競馬では一昨年から九州産限定の2歳新馬戦も開催している。今年もすでに1レースが行われ、「九州産馬の入厩頭数が激増とまではいきませんが、早い時期から揃っていると言えます」と佐賀県競馬組合総括監の生駒健一郎氏。九州産馬の一つの目標ともなっているのだろう。競馬ファンにお馴染みの九州産限定重賞・霧島賞も今年は7月9日に行われる予定で、こちらも見逃せない。

 九州唯一の地方競馬として生き残った佐賀。初開催のJBCに向けて、同じ九州で生まれた馬たちとともに“九州魂”で盛り上げていく。

(文・大恵陽子)

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