思い起こすのは心情的に少し憚られるが、昨年の
道営記念に触れずして、今年の
道営記念を語ることはできない。昨年は、4角での落馬事故により、出走頭数の半分以上にあたる6頭が競走を中止する結果となった。どの陣営も、やりきれない思いでシーズンを終えたはずである。できることなら同じメンバーで再戦を。その願いは叶わなかったが、一年越しに改めて行われる頂上決戦を、心して見届けたいと思う。
ベルピットは、昨年、無念にもゴールを果たせなかった馬の1頭である。オフシーズンをかけてそこから無事に立ち直り、そして今年、押しも押されもせぬ絶対王者へと進化を遂げた。ひとつひとつのレース内容を振り返る必要はもうないだろう。ここを勝って初めて、名実ともに道営チャンピオンの称号を得ることになる。待望される全国への挑戦に向け、改めて最強を証明してもらいたい。
絶対王者へ接近できる存在は、
アナザートゥルースと
ニシケンボブの2頭に絞られる。
アナザートゥルースは昨年の
道営記念で2着だったが、落馬事故を避けなければいけない不利があり、完全燃焼のレースができたわけではなかった。今シーズンは、春の遠征の疲れが抜けずに復帰が遅れたものの、そこから3戦できっちり本調子を取り戻している。10歳という年齢を考えても、今年に懸ける思いは大きかろう。何とか一矢報いたいところだ。
ベルピットという馬に対する意識の強さでいえば、おそらく
ニシケンボブの右に出るものはいない。2頭は同世代であり、ホッカイドウ競馬三冠馬に輝いた
ベルピットの影で、その三冠競走すべて2着だったのがこの馬である。今シーズンは徹底して地元重賞に出走せず、逆転のために特別戦で黙々と爪を研いできた。大一番で、満を持しての直接対決となる。この勝負の行方にも注目したい。
上位3頭からやや差が開いて、
スコルピウスや
スギノプリンセスなどが続くという構図だ。何よりすべての人馬が力を出し切ることを切に願いつつ、
道営記念らしい、各陣営の意地がぶつかる熱いレースが展開されることを期待したい。
(文:競馬ブック・板垣祐介)