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52歳のオールドルーキー加藤公太師が美浦研修で得たもの トップを目指す同期の姿勢から受けた刺激

デイリースポーツ
  • 2025年01月21日(火) 06時00分
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 人生の折り返し地点を越えた私なんぞは、既に定年後の在り方を考えているのだが、昨年暮れのG1シリーズのさなかに栗東からうれしい便りが届いた。かれこれ20年来の付き合いになる加藤公太助手が、調教師試験に見事合格したのだ。

 同い年の52歳。試験を受け始めて6回目にして難関を突破した。JRA調教師の定年は70歳。私からすれば、果てしなく長く感じる18年であっても、トレーナーに転身した加藤公師からすれば、野心をかなえるための時間はそう長くはない。

 今年、栗東で新規に開業できる枠は6厩舎。前年度に合格した4人に加え、同期で合格した4人のうち2人が開業できるのだが、技術調教師として経験を積むなど各人の思惑はさまざま。そのなかで、彼は「時間がもったいない。迷わず立候補した」と開業を即決したそうだ。

 「どんな厩舎をつくりたいのか?そのビジョンを描くことが大切」だと彼は言う。昨年末、電話で「年明けに美浦へ研修に行くよ」と聞いていたが、その後に続いた言葉が興味深かった。

 「そう頼れる人もいないんだけど、競馬学校で同期だった木村哲也調教師に研修を依頼したら快諾してもらって。開業までわずかな期間だけど、広い視野を持って、これはいいと思ったものを取り入れたい」。

 年が明けた美浦トレセン。木村師に同行する彼の姿があった。遠目で見ていて何を話しているのかは分からないが、言わずと知れたトップトレーナーは、オールドルーキーに対して惜しみなく、大いに持論を伝えているように見受けられた。

 その数日後。ささやかながら、トレセン近郊の居酒屋で調教師試験合格を祝った。久々の再会に積もる話は尽きないが、関心事は競馬学校の同期生であり、先輩調教師であり、これからライバルとなる木村師と過ごす日々。それは一体、どのようなものなのか。

 ウーロン茶を手に彼はこう言った。「僕とは違って、彼は競馬学校時代から真面目だったからね(笑)。厩舎内を見渡しても、一つ一つのこだわりがすごい。そして、彼は本当に馬をよく見ている」。専門的なことは分からないが、馬具や飼料、調教内容など、管理馬それぞれの個性に合わせて考え抜かれた姿勢に感銘を受けたようだ。

 『馬づくりは人づくり』とも言う。木村厩舎のスタッフはプロフェッショナル。さらなる高みを目指して歩みを止めない姿勢にも驚く。「イクイノックスというあれだけの名馬を手掛けた後も、その栄光に満足することなく、さらに越えようとする向上心がすごい。また、その思いをスタッフ全員で共有しているところがすごいと思った」。トップを目指す同期に刺激を受け、加藤公厩舎が目指すべきビジョンが徐々に描かれつつある。

 大久保厩舎ではスマートレイアーとともに初の海外遠征へ。16年の香港ヴァーズで5着。翌17年にも香港Cに挑戦して5着に敗れたが、「ホースマンとしてレベルアップした感じがした」と振り返る。その4年後には、チュウワウィザードでサウジ&ドバイ遠征へ。「サウジCは9着に負けたけど、次のドバイWCで巻き返せる手応えがあった。あの時の2着は自分にとって自信になった」。自身が積み重ねてきた経験は、トレーナーとして大きな強みとなることだろう。

 「今のところは不安しかないよ」。そう胸中を吐露した加藤公師だが、彼の座右の銘は『雨垂れ石を穿つ(あまだれいしをうがつ)』。小さな努力でも根気強く続けていれば、いつか大きな成果が得られるということわざだ。浮足立つことなく、長く師事してきた大久保師の教えをベースに、今回の美浦研修で得たスパイスを加えて、じっくりと魅力的な厩舎をつくり上げてくれるはず。オールドルーキーの挑戦を心から応援したい。(デイリースポーツ・松浦孝司)

 ◆加藤公太(かとう・こうた)1972年12月26日生まれ、52歳。京都府出身。00年に美浦・森安弘昭厩舎で厩務員となるが、家庭の事情で02年に栗東・佐山優厩舎へ移籍。同年に調教助手となり、10年に大久保龍志厩舎へ。20年チャンピオンズCなどG1級競走4勝を挙げたチュウワウィザードや17年京都大賞典など重賞4勝を挙げたスマートレイアーを手掛ける。24年に調教師免許を取得。今年3月に開業予定。

提供:デイリースポーツ

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