「高校生が生産、育成した馬が優勝」。そんな快挙を達成してから、早くも20年の歳月が流れた。日本の公立高校で唯一、サラブレッドの生産を行っている北海道静内農業高等学校。同校から羽ばたいた馬が
中央競馬で初勝利を飾ったのは、2005年2月13日のことだった。
重賞・益田優駿を制したアラブの
サントゥールワンなどが過去の生産馬にいたものの、
JRAでの勝利は同校の悲願だった。生徒や関係者の夢を託されたのは
ユメロマン。
父ジェネラス、
母サクラトキメキ、母の
父アンバーシャダイの牡駒は、北海道静内農業高校旧畜産科(現生産科学科)で産まれ、育成された。03年のサマーセールに上場し、税抜き250万円で田中春美氏が落札。その後、美浦・宗像義忠厩舎に預け入れられた。
迎えた05年2月13日のデビュー戦は4番人気で出走。春美氏のご子息である
田中勝春騎手が手綱を任された。好位の5、6番手に付けた
ユメロマンは、直線で最内を突いて鋭伸。中団から追い込んだ
マイネルハウンドを半馬身差抑え込み、新馬勝ちを飾ったのだ。この快挙には生徒や学校関係者はもちろん、生産界や競馬ファンまで、多くの人びとに笑顔が広がった。
同校はそれから20年が経った今も競走馬の生産を続けている。
JRAに現役馬は居ないが、昨年のJBC当日には佐賀で
マギーズミッションが初陣。勝利こそならなかったものの、生産界と密接な関わりを持つ「JBC」の舞台にも蹄跡を残した。ほかにも、兵庫で
ライトブラーヴ、浦和で
フォーゲルヴァイデが現役。14年産の
ミンナノユメノセテは1戦1勝で引退したが、繁殖入りして5頭の産駒を産み、枝葉を広げている。
毎年、サマーセールには生産馬が上場され話題を呼ぶ。昨年は2頭の仔馬が生まれており、今夏も生徒自慢の若駒がお披露目されるに違いない。いつの日か、
JRA通算3勝を挙げた
ユメロマンを超えるような、夢と浪漫が詰まった産駒が登場することを期待しよう。