「オーシャンS・G3」(3月1日、中山)
半世紀のホースマン人生のラストをまな弟子と締めくくる。今週末で定年引退となる木原一良調教師(70)=栗東=が、
テイエムスパーダを送り出す。自身が騎手としてデビューした思い出の中山競馬場でのラスト重賞。師は「本当にあっという間でしたし、よくここまで来たなと。悔いはないし、無事に全うできたという気持ちです」と晴れやかな表情でラストウイークの心境を語る。
74年に騎手デビューし、84年に調教助手に転身。99年に開業すると、重賞2勝を挙げた
テイエムジンソクなど多くの重賞馬を手掛けた。さらに
武英智調教師(44)や
田中健騎手(36)、
富田暁騎手(28)ら、馬だけでなく次世代を担うホースマンも育ててきた。
「強くても勝てないのが競馬。馬の状態が良くても、レースの流れはやってみないと分からないからね。50年やっても競馬の答えは分からなかったよ」。そんな厳しさを知るからこそ、
田中健、富田の2人の弟子に自厩舎の馬で重賞を勝たせたことが誇り。「重賞はみんながいつも以上に勝ちにくるから、勝ちたくても勝てるものじゃない。ジョッキーにとっても重賞を勝つのは勲章だから。2人が勝ってくれたのは特別うれしかったよ」と目を細める。
最後の重賞には、師匠の引退に合わせて米遠征から一時帰国した富田が騎乗する。「動きは悪くないし、状態は変わりない。とにかく自分の競馬を」と師。馬も人も育てた指揮官は、最後まで穏やかな笑顔で愛馬とまな弟子の活躍を見届ける。
◆木原一良(きはら・かずよし)1954年4月25日、北海道出身。74年3月に中山・富田六郎厩舎から騎手デビュー。76年3月から栗東に拠点を移し、84年に騎手を引退(602戦29勝)した。栗東・内藤繁春厩舎で調教助手に転身し、98年に調教師試験に合格。99年に開業した。10年
新潟記念の
ナリタクリスタルで重賞初制覇。JRA通算5655戦352勝(うち重賞11勝、25日現在)。
提供:デイリースポーツ