歴史の扉が開いた。JRA初の女性トレーナーとなった
前川恭子調教師(47)=栗東=が5日、厩舎を開業させた。激動の一日に充実の汗を拭いながら、今後の抱負、競馬界への思いを口にした。また、元G1ジョッキーの
田中勝春調教師(54)=美浦、
秋山真一郎調教師(46)=栗東=も新たな船出を飾った。
ついにこの日を迎えた。JRA初の女性調教師となった前川師が厩舎を開業した。大忙しの一日を終え、「まだバタバタしていて、終わった感じがしないですね。“私の厩舎だ”と感慨深くなる時間もないくらいバタバタ。とりあえず、調教が無事に終わって安心しました」と笑顔を見せた。
調教師試験に合格したのが23年12月。そこから1年2カ月、技術調教師としての期間のほとんどを矢作厩舎で過ごした。「矢作先生の影響はめちゃくちゃ受けていますね。先生は(スタッフに)気持ち良く働いてもらう(ようにする)ことが上手な方です。みんな同じ方向に向くように、年月をかけてやってきているので。一番楽しい厩舎を目指したいですね。“矢作イズム”を一番色濃く受け継いだ弟子を目指しているので」と、トップステーブルに習って働きやすい環境づくりを理想に掲げる。
それまでJRAでは男性しか調教師はいなかったが、トレセン入り当初からトレーナーになることを志していた。合格までの道は険しく、一度はくじけて全く受験しなくなった時期もあったというが、「やりたいことが積もり積もって、それをやるためにまた受験し始めました」。5度目のチャレンジで見事、合格を果たした。
最後まで諦めなかったのは、女性への門戸を開きたい思いが強かったから。「勉強は大変でしたが、女性にもたくさん競馬を知ってもらえると思って、それが
モチベーションでした。海外では女性の乗り手が多く、厩舎の半分くらいいます。それが普通だと思いますが、今は人手不足なので」とパイオニアとして競馬界を変えていく構えだ。
記念すべき初陣は、日曜阪神7Rの
テクネチウムの予定。名伯楽に薫陶を受けた女性トレーナーが、次々と歴史の扉を開いていけるか。
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前川恭子(まえかわ・きょうこ) 1977年4月9日、千葉県富里市出身。筑波大卒業後、北海道のビクトリーホースランチで2年間の勤務を経て03年に競馬学校厩務員課程に入学。同年10月、栗東・崎山博樹厩舎に厩務員として所属。田所秀孝厩舎を経て、19年3月から
坂口智康厩舎で調教助手を務める。23年12月、調教師試験に合格してJRA初の女性調教師となった。家族は夫と高校生の娘
提供:デイリースポーツ