中京開幕週の日曜メイン「第61回
金鯱賞」の追い切りが12日、東西トレセンで行われた。昨秋に芝2000メートルに切り替え、
アンドロメダS、
中日新聞杯と連勝中の
デシエルトは栗東坂路4F54秒3~1F12秒8としまい重点でフィニッシュ。気合乗りの良さを考慮しつつ、絶妙なサジ加減で負荷をかけた。レース当日に初コンタクトを取る名手・
武豊がどうリードするか。脂が乗った良血6歳馬が注目の今季初戦を迎える。
今年の
金鯱賞が例年より“10倍も楽しめる”理由は
デシエルトと
武豊の人馬が戦法面と話題性で群を抜く注目度だからだ。
坂路の追い切りは「既に戦闘モードなので、なだめる感じ」と安田師が的確な分析をした通りで、最初の1Fはまるでロデオ状態。戦闘モードだからこその激しさを厩舎スタッフがなだめつつの登坂で4F54秒3~1F12秒8を計時。
ダートに起用していた時は「爆発力に陰りが見えてきたので」と判断、その後の矛先を芝2000メートルへ向けるや目下、覚醒したかのように2連勝。特に前走・
中日新聞杯は「
パニックになるギリギリの精神状態」だったと明かしているので、普通ならこの中間は穏やかさを求めそうなものだが、若きダービートレーナーの思考はひと味違う。4日前の9日は坂路4F51秒4の好タイムで刺激を与えている。すなわち爆発力を生む凶暴さにスレスレの状態はある意味、求めてきたものだから
デシエルトには悪いものでないと言外に伝えている。
「強過ぎる前進気勢があって逃げられるシチュエーションを考えてレース選択してきた。ジョッキーには“逃げてください”とリク
エストはしませんが、この馬のリズムとなると自然に逃げる形になると思う」と脳裏に描いた。
指揮官から新しいパートナーに指名されたのは希代の逃げ馬
サイレンススズカで伝説の
金鯱賞(98年)を演じている
武豊だ。「皆さんが(新聞)記事的に飛び付く話ですね」とニヤリ。
デシエルトのイメージを問われると「難しい印象とポテンシャルの高さ。でも、先入観を持たずに乗りますよ。ここ2戦はスローじゃなく、スイスイと逃げ切っていますよね」と楽しみを膨らませた。自身の誕生日は
金鯱賞前日の15日。56歳になって最初の重賞の相棒がかなりの個性派。今年の
金鯱賞は絶対に見逃せない。
▽98年
金鯱賞VTR(5月30日、中京芝2000メートル、良馬場)4歳になった
サイレンススズカは年明け初戦の
バレンタインSから
中山記念、
小倉大賞典と3連勝中。単勝2・0倍の1番人気に支持された。好スタートから一気にハナを奪うとスピードの違いで、すぐに5馬身差。3角手前ではその差が8~10馬身まで開いてしまう。直線は中継するカメラが大きく引く映像。間違いない圧勝劇をファンは大きな拍手で迎えた。1分57秒8のコースレコードで駆け抜け、2着
ミッドナイトベットに1秒8差の大差勝ち。続く
宝塚記念でG1初制覇を飾った。
《
武豊98年以来Vへ名牝の血後押し》
武豊にとって
デシエルトは縁が深い血統だ。曽祖
母エアグルーヴの主戦を務め、96年
オークス、97年
天皇賞・秋など重賞6勝。祖
母アドマイヤグルーヴでも03&04年
エリザベス女王杯連覇など重賞5勝、大叔父にあたる
フォゲッタブル(
アドマイヤグルーヴの半弟)で10年ダイヤモンドSを制した。
武豊が勝てば91年
ムービースター、93年
ウィッシュドリーム、98年
サイレンススズカ以来、27年ぶり4度目の
金鯱賞制覇。初コンビで重賞Vへ、名牝の血が後押しになる。
スポニチ