【競馬人生劇場・平松さとし】
今からちょうど10年前の2015年、ス
プリングS(G2)を制したのが
キタサンブラックだった。
同年の秋には
菊花賞(G1)を勝ってG1馬の仲間入りを果たす同馬は、古馬になってレジェンド・
武豊騎手を鞍上に迎える。するとその後は、ほとんど崩れることなくG1を勝ちまくる。16年には
天皇賞・春と
ジャパンC、翌17年はこの年からG1に昇格した
大阪杯を勝つとそのままの勢いで
天皇賞・春を前年に続き連覇。さらに
天皇賞・秋も勝ち、春秋天皇賞制覇を果たすと、ラストランとなった
有馬記念も優勝。最終的に当時の
JRA最多勝タイ記録となる7度のG1制覇を成し遂げてみせた。
さて、こんな名馬であるが、ス
プリングSに出走した時点ではまだ2戦のキャリアのみ。その2戦をいずれも勝利してはいたが、管理する
清水久詞調教師は「半信半疑の気持ちでス
プリングSに送り込みました」と後に語っている。
「2戦2勝といっても新馬戦と自己条件の500万下を勝っただけでした。相手関係を見ると、レース選択を誤ったか?!と思ったのです」
実際、この年の
皐月賞前哨戦はなかなかのメンバーがそろっていた。同じ2戦2勝でも重賞の
共同通信杯(G3)を勝っていた
リアルスティール、前年の
朝日杯フューチュリティS(G1)の覇者で
JRA賞最優秀2歳牡馬に選定された
ダノンプラチナ、
京成杯(G3)の1、2着馬である
ベルーフと
ブラックバゴ。世間の
キタサンブラックを見る目も清水調教師と同様、半信半疑だったと思え、彼らに続く5番人気という評価でしかなかった。
しかし、
北村宏司騎手にいざなわれた後のG1馬は、2番手で流れに乗ると早めに抜け出す。最後は
リアルスティールの追い上げをしのぎ、見事に先頭でゴールを駆け抜けたのである。
「オーナーも久しぶりの重賞制覇だったので喜んでくれました」
オーナーはご存じ歌手の北島三郎氏。さて、そんなス
プリングSが今週末、行われる。果たして今年はどんなドラマが待っているだろう。 (フリーライター)
スポニチ