年齢は30歳ほど離れているが“名探偵コナン”で意気投合。いつも、コナン話で盛り上がった後に競馬の取材へと移る。1月27日付で栗東所属になった
秋山稔樹騎手(23)=フリー。デビュー6年目の注目株だ。
20年3月1日の中山1Rが初騎乗。5着に敗れた2週間後、その
ラブエスポーで美浦の新人一番乗りとなる初勝利を飾った。「模擬レースは12回ほどやって一つも勝てなくて…。同期は4人だけなので、みんな一つは勝っていたのに。デビューしてからも不安しかなかった。師匠の馬で初勝利をさせてもらい、人が勝たせてくれるんだなと感じました」と振り返る。
1年目が17勝、2年目には42勝と順調に勝ち鞍を伸ばしたが、3年目は20勝と下降。4年目の23年6月から栗東滞在を志願した。「環境を変えてみたいと師匠(蛯名利師)に相談したところ、背中を押してくれました。紹介していだいたのが宮先生。お世話になって、勝たせていただいて。他厩舎にも乗せてもらいました」。新鮮で有意義な3カ月間だった。
ただ、美浦に戻っても乗り鞍は増えず、迎えた5年目は年明けから栗東滞在を再開する。小倉の14日間で44鞍に騎乗して4勝し、夏以降も滞在を継続。決して満足のいく数字ではないが、騎乗数も勝ち鞍も前年(23年)を超えた。そして、今年の1月27日付で栗東所属のフリーに転向。一大決心だった。「師匠にすごくお世話になっているので、調教も乗って、競馬でも結果で恩返ししたいと考えていました。ただ、自分の力不足もあってうまくいかなかった。ある種の覚悟」と口元を結ぶ。
移籍直後の2月2日、小倉11R・
門司Sを
ホールシバンで勝利。日曜メインジャックは初めてだった。「栗東に来て、調教師の先生やオーナーさんとのつながりも広がり、改めて人から仕事をもらうんだと。それを肌で感じ、すごく意識が変わりました」と感謝する。
1回小倉では5週目が15鞍で最終週は12鞍。中京1週目も16鞍と騎乗機会に恵まれ、「栗東に来る直前は毎週4、5鞍だったので考えられない数字。だからこそ、それに応えたい」とうなずく。騎乗数は
モチベーションと技術向上に結びつき、オーナーとの縁にも波及する。結果は自分次第だが、美浦にいた時は騎乗数も少なく、その入り口にも立てなかった。
2月15日にはJRA通算100勝を達成した。「達成感はあるけど、特別な思いはないんです。たくさん乗せてもらった結果、100個積み上がっただけ。次の目標も次の1勝。その1勝が積み重なって、200勝になる。そのためには人に助けてもらわないといけない。1年間死にものぐるいで頑張っても、4年目はやっと5勝。乗り鞍を集めるのも大変だし、勝つことは本当に難しい」。どん底も味わったからこそ見える景色もある。
栗東へ移籍したからといって、それだけで仕事が舞い込むわけではない。ただ、環境の変化がもたらした影響は間違いなく大きい。「苦労しかないけど、それもやりがい。苦労のない仕事などない」。信じた道を突き進んでもらいたい。(デイリースポーツ・井上達也)
提供:デイリースポーツ