4月1日、千葉県白井市の競馬学校で騎手課程第44期生の入学式が行われた。あいにくの冷たい雨が降りしきるなかでの門出となったが、女性2人を含む9人の若者はスタージョッキーになるという大きな夢を胸にこの日、出発地点に立った。
ただ、少し気になったことがある。今年の騎手課程の応募総数は198人。昨年より1人増加しているとはいえ、最も応募者の多かった98年の761人と比べると4分の1ほど。騎手を目指す若者の数は明らかに減少傾向にある。
24年のJRA年間売り上げは約3兆3337億円で、13年連続の増加。競馬(馬券)人気に陰りは見えないが、“現場のなり手不足”は進む一方だ。少子化の影響はもちろんあるが、体重制限やケガのリスクといったさまざまな要因からジョッキーという職種自体が“将来の選択肢”の一つとして考えにくくなっているのかもしれない。
騎手という仕事が昔より特別な存在になってきているなか、今春入学した9人は、それぞれ強い動機と覚悟を持って門をくぐる。
池添学師の長男・陽(ひなた)君は、祖父の兼雄元調教師が管理し、伯父・謙一が騎乗した
ヤマカツエースの17年
金鯱賞でのVシーンを見て「騎手になりたい」と思い、伯父が歩んだ道が“夢”ではなく“目指すべき職業”になったという。
天皇賞・春Vの
キタサンブラック&
武豊に憧れたというのが長谷川真之介君。その瞳には確かな決意が浮かんでいた。
また今回、女性2人が入学したが、これも新たな時代の潮流かもしれない。角祈凛(すみ・きりん)さんと笠原暁子さんは、共に「勝ちたいレースは牡馬3冠と牝馬3冠」といった高い目標を掲げていた。今年の
フェブラリーSで、R・キングが史上初の女性騎手によるJRA・G1制覇を成し遂げたばかり。性別の垣根を乗り越えて活躍できる土壌が整ってきたのは、日本の競馬界発展を考えれば喜ばしい傾向だろう。
華やかに見える騎手の世界は決して甘くない。最低3年間は鍛錬を積まなければならず、入学した全員が同時に騎手免許を取得できるのは、むしろ珍しいケースだ。とはいえ、彼らは今春、競馬学校の正門に立つことができた。その姿は『競馬界の未来』そのもの。数年後、彼らがターフで輝く日を心待ちにしたい。(デイリースポーツ・刀根善郎)
提供:デイリースポーツ