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【桜花賞】森一誠師と“3つの出会い” エンブロイダリーでG1初挑戦「能力は凄く高いと感じてた」

スポニチ
  • 2025年04月09日(水) 05時30分
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 春G1シリーズの水曜企画は「G1 追Q!探Q!」。担当記者が出走馬の陣営に「聞きたかった」質問をぶつけて本音に迫る。25年クラシック開幕戦「第85回桜花賞」は東京本社・鈴木悠貴(33)が担当。エンブロイダリーを送り込む開業2年目の森一誠師(47)に取材し、G1初挑戦につながった“3つの出会い”を探った。

 ≪愛馬≫エンブロイダリーが入厩したのは約1年前。森一師は馬体を見て素質を確信した。「父アドマイヤマーズに似て筋肉質。それでいて素軽さもある。牝馬っぽくない、いい体つきだな。能力は凄く高いなと感じていました」。その後、4月にゲート試験を合格し6月にデビュー。初戦は2着に敗れたが、2戦目をレコードで勝ち上がった。早めのデビューによって無理のないローテを組めたことが、桜花賞出走につながったと指揮官は考える。「アクシデントがあってレースまで行けない馬がたくさんいる中で、この馬は比較的順調に調整できた。一歩一歩の積み重ねが前走クイーンCの強い勝ち方につながったと思う」。前走後は放牧を挟み、現在は栗東滞在で調整。1週前追いはCWコースでラスト1F11秒1と鋭い伸びを見せた。「長めからしっかり時計を出して道中は折り合っていたし、直線の反応も良かった」と森一師も動きに満足。デビューからスムーズに追い切りを重ね、素質馬が思惑通りの成長曲線を描いている。

 ≪堀師≫“Find the detail(ファインド・ザ・ディテール)”。牧場勤務を経て04年7月から師事した堀師の言葉が、森一師のトレーナーとしての指針になっている。「堀先生は馬をよく観察していた。身の回りの世話をしている厩務員が見落とすことまで先生は気づいていた。調教だけではなく常歩(なみあし)、立ち姿から馬をじっくり見る。そこから調教の土台をつくっていくんです」。小さな変化こそ重要。それを知っているからこそ、森一師は調教時の環境にも気を配る。「毎朝コースを歩いて、どんな馬場なのか、風の強弱はどうかを確認するし、それによって調教の指示の出し方を変えている。例えば時計が出ない条件なら“気を抜かせないように走らせてくれ”と」。先月30日の高松宮記念サトノレーヴで制し、現役4位となるJRA・G1・16勝目を挙げた堀師。その教えを胸に、森一師は着実に調教師としての歩みを進めている。

 ≪国枝師≫森一師はJRA通算19勝だが、そのうち重賞2勝(24年カペラS=ガビーズシスター、25年クイーンC=エンブロイダリー)を含む11勝が牝馬。牝馬で結果を残す秘訣(ひけつ)は、アパパネアーモンドアイなど多くの名牝を育て上げた国枝師から学んだ。「国枝先生は大学(東京農工大)の先輩。技術調教師の時に研修をさせていただいたし、話をする機会もたくさんあった。“牝馬は繊細なところがあるのでやりすぎないように、詰め込みすぎないように”ということを教えていただきました」。開業2年目、早くも訪れた夢の大舞台。「全ての競馬関係者が目標とするところだし、ファンの注目度も大きいG1。最高の状態で出走させることが調教師の務めです」。堀師と国枝師。現役屈指の名伯楽から流儀とノウハウを吸収した新進気鋭のトレーナーが、G1初挑戦初Vの偉業に臨む。

 ◇森 一誠(もり・かずとも)1977年(昭52)9月28日生まれ、山形県出身の47歳。東京農工大を卒業後、ノーザンファームに入社し山元トレセンで2年間勤務。04年7月、美浦・堀宣行厩舎の厩務員になる。後に持ち乗り助手となり、ロックドゥカンブ(07年セントライト記念など重賞2勝)、サリオス(19年朝日杯FSなど重賞4勝)などを担当。22年12月に調教師試験に合格し、24年3月に厩舎を開業した。JRA通算180戦19勝。趣味は将棋。好きな歌手はサザンオールスターズ。

 【取材後記】森一師が競馬界を志したきっかけはスポーツ紙。「(当時)山形では競馬中継もなく競馬のことはあまり知らなかった。高校生の時、スポーツ新聞を読む習慣があって、競馬欄も一通り読んでいた。それでダービーというレースがあることを知ったんです」。93年のウイニングチケットビワハヤヒデナリタタイシンの3強対決に感化され「面白いなと思った。その年の有馬記念トウカイテイオーの復活を目の当たりにして、競馬を仕事にしたいと思いました」と振り返る。

 高校卒業後は馬術部があり、かつ近くに東京競馬場がある東京農工大に進学。ノーザンファーム天栄の木実谷(きみや)雄太場長は後輩。「僕が3年の時に彼が1年で入ってきて。彼も競馬好きということで意気投合」。山元トレセンでも一緒に勤務し、夢に向かって切磋琢磨(せっさたくま)した。(鈴木 悠貴)

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