◆第85回
桜花賞・G1(4月13日、阪神競馬場・芝1600メートル)
G1初挑戦となる森一調教師は開場前の美浦・Wコースを自ら歩き、馬場状態をチェックするのがルーチンだ。「馬場が悪いから気を抜かせないように、などの指示をします」。
エンブロイダリーが2週前追い切りで5ハロン65秒7―11秒4の好タイムを出したが「歩いた瞬間に速い馬場だと感じましたから」と冷静に分析している。
細部へのこだわりは、04年7月からスタッフとして所属した東の名門・堀厩舎で学んだ。「堀先生は厩務員が見落としていることにも気づくんです。じっくりと馬を観察する。本当に大事なことです」。同師の掲げる“Find the detail”(細部から発見する)の精神を受け継ぎ、自ら最前線で目を光らせる。
その判断力を生かし、栗東滞在を選択。初めての環境にも快速娘はしっかり順応した。「最初の3日間はカイバ食いが落ちましたが、今は活気があります。美浦より天気も良かったですからね」。天候も味方につけ、万全の態勢を築き上げた。
競馬の道を志したきっかけは高校生だった93年に、
ウイニングチケットが制した
日本ダービーをスポーツ新聞で目にしたこと。あれから30年以上が過ぎ、開業2年目でクラシックに管理馬を有力候補の一角として送り出す。「最高のメンバーがそろいましたが、
エンブロイダリーのパフォーマンスが出せれば勝負になります」と1冠目に自信を見せている。(角田 晨)
◆森 一誠(もり・かずとも)1977年9月28日生まれ、47歳。山形県出身。東京農工大学を卒業後、ノーザン
ファームに入社、山元トレセンで2年間勤務。04年7月から美浦・
堀宣行厩舎のスタッフに。22年12月に調教師試験に合格、24年3月に開業。昨年12月のカペラS(
ガビーズシスター)で重賞制覇。今年2月のクイーンCを
エンブロイダリーで制し、史上初の初出走から重賞出走機会2連勝。
JRA通算180戦19勝。趣味は将棋。好きなアーティストは
サザンオールスターズ。
スポーツ報知