◆第85回
皐月賞・G1(4月20日、中山競馬場・芝2000メートル)
第85回
皐月賞・G1(20日、中山)で、2歳王者
クロワデュノールが史上22頭目、3年連続となる無敗Vを目指す。主戦の
北村友一騎手(38)=栗東・フリー=が3冠初戦を前に思いを語った。「力を出し切れれば負けない」。
ホープフルS覇者が直行Vなら20年の
コントレイル以来。王者の力を見せつける。
デビュー20年目、騎手として円熟の域に差し掛かった北村友が、昨年の
JRA賞最優秀2歳牡馬の
クロワデュノールと
皐月賞に挑む。デビューから3戦3勝で
ホープフルSを制し、大本命として迎える大一番だ。
「
ホープフルS組が、しっかりと
トライアルや重賞を勝っている。客観的に見ても、
ホープフルS組が強いと思います。クロワ自身の能力を、競馬のなかで出せるように。そこが一番のポイントです」
21年の5月に落馬して、背骨8本を折るなど大けがを負い、そこから復帰までには約1年を要した。しかし、昨年は自身最多タイとなる、
JRAで年間重賞7勝を挙げるなど、活躍が目立った。20年の
有馬記念(
クロノジェネシス)以来のG16勝目となった
ホープフルSのインタビューでは、自然と涙があふれた。
「レース後の斉藤(崇史)先生のコメントを読んだら、いろいろと僕のことを思ってくださっていたんだなと。僕もあの時の雰囲気は
有馬記念と似ているなと感じていて、感慨深かったです。本当に多くの人に助けてもらって、一人ではあの場に立てていなかったという思いが強いです」
G1・4勝の名牝
クロノジェネシスと同じ斉藤崇厩舎から、再びスター候補生と巡り合った。昨年6月の新馬戦を圧勝。2走前の東京スポーツ杯2歳Sでは万全の状態ではなかったが、きっちりと勝ち切った。
「初めてまたがった時に走ると思いました。瞬発力が少し足りないかな、と感じていますが、まだこれからです。2走前も動けない体で、上がり33秒3の脚を使ってくれました。対応力がポテンシャルの高さではないでしょうか」
9日の1週前追い切りでは、栗東・CWコースで6ハロン81秒1―10秒9をマーク。3頭併せの真ん中を、抜群の手応えで半馬身先着した。遅れた2週前追い切りとは違い、鞍上にも笑みがこぼれた。
「追い切り見ましたか? 正直、2週前は大丈夫かなという印象でしたが、素晴らしい動きをしてくれて、さすがだなと。馬がさらにしっかりしました。(これまでで)今日が一番良かったです」
段階を踏んで状態も良くなり、もう仕上がりには何の不安もない。初の牡馬クラシック勝利に向けて、自然体で
クロワデュノールを導くだけだ。
「力を出し切れれば負けないと思っていますし、
クロワデュノールという名前がどんどん広がってくれたらいいなと。注目されて臨むクラシックは初めてなので、自分の人生にとっても大きい。それ以上のものが得られたらと思います」
皐月賞を制した時には、どんな景色が広がっているだろうか。また、涙でかすむかもしれない。(山下 優)
◆北村 友一(きたむら・ゆういち)1986年10月3日、滋賀県出身。38歳。2006年3月に栗東・田島良保厩舎から騎手デビューし、14勝を挙げて関西放送記者クラブ賞(関西所属新人賞)を受賞。
JRA通算939勝。19年の
大阪杯(
アルアイン)でG1初勝利。G16勝を含む重賞35勝。現役の同期は田村、的場、黛。164・5センチ、51・0キロ。血液型A。
◆
コントレイルと同じ
クロワデュノールは新馬V後、東京スポーツ杯2歳S・G3に続き、
ホープフルS・G1を制して
最優秀2歳牡馬に輝いた。ここまで
皐月賞への直行を含め、20年に史上3頭目の無敗3冠を達成した
コントレイルと同じ軌跡をたどっている。
最優秀2歳牡馬の
皐月賞制覇なら、その
コントレイル以来、史上8頭目となる。
クロノジェネシスで果たせなかった夢の続きを―。斉藤崇調教師は、北村友とのコンビで再度、大舞台に挑むことに喜びを感じている。同馬とは20年
宝塚記念、
有馬記念の
グランプリ連覇などG13勝をマーク。だが、21年
宝塚記念(1着)を含むラスト3戦に、落馬負傷で戦線離脱していた北村友の姿はなかった。
「また違う馬で一緒に大きなところを目指したい」と話していたトレーナー。
桜花賞、
オークスともに3着に終わり、当時は届かなかったクラシックのタイトルを、
クロワデュノールの手綱を任せる北村友と勝ち取るチャンスが巡ってきた。9日の1週前追い切りを終え、「この動きなら大丈夫。順調に来ていることが確認できました」とうなずいたトレーナー。万全の状態に仕上げ、鞍上にバトンを渡す。
スポーツ報知