◇鈴木康弘氏「達眼」馬体診断
2歳女王決戦は「悠」「鋭」「速」の三つ巴だ。鈴木康弘元調教師(81)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第77回
阪神JF(14日、阪神)では
アランカール、
アルバンヌ、
スターアニスの3頭を1位指名した。中でも達眼が捉えたのは
アランカールの悠然とした立ち姿と体形。
母シンハライト(16年
オークス馬)以上の中長距離適性を1文字で示せば「悠」。12日に発表される「今年の漢字」になぞらえて各馬の特徴を漢字1字で表してみた。
25年の世相を漢字1字で表す「今年の漢字」(主催・日本漢字能力検定協会)が漢字の日にあたる12日、京都・清水寺で発表されます。「漢字辞典オンライン」が実施した予想投票によると、1位は「熊」、2位「高」、3位「米」。この3字に票が集中しています。新語・流行語大賞でも「クマ被害」、「古古古米」がトップ10入りしたように「熊」、「米」に騒然とした一年。物価高騰、夏の記録的な高温など「高」にまつわる現象にも悩まされました。「今年の漢字」のウェブサイトで9日まで応募可能。最も応募数が多かった漢字が選ばれますが、前予想では「熊」、「高」、「米」の三つ巴です。
阪神JFも有力候補の立ち姿を見る限り三つ巴の様相。トップ3の特長を漢字1字で表せば、
アランカールは「悠」、
アルバンヌは「鋭」、
スターアニスは「速」。中でも
アランカールは来春のクラシックでも注目したい馬体です。背中にゆとりがあり、腹下も長い。1800メートルの新馬戦、マイルの
野路菊Sを強いレースぶりで連勝していますが、
オークスの2400メートルにも対応できる中長距離体形。馬体がゆったりとしたつくりなら、気性も悠然としています。穏やかな顔つきで悠々とハミを受けている。2歳馬らしからぬ大人っぽい立ち姿です。
9年前の
オークスを制した
母シンハライトも悠然とした立ち姿を見せる馬でした。430キロ前後の小さい体に備えた柔軟な筋肉、スラリと抜けた首差しも母譲り。そのため、母も娘もしなやかさが際立っています。母は首から背中、腰にかけて流れるようなラインを描いた美しい体つきでしたが、こちらは前述した通りゆったりした胴長体形。母以上に長めの距離が合いそうです。
トモの筋肉は物足りませんが、3歳になれば発達してくるでしょう。右前肢内側の骨りゅうも成長過程にできるものなので問題ないでしょう。毛ヅヤは良好。2カ月半の休養明けでも良く仕上がっています。
馬体も立ち姿もゆったりとした2歳牝馬。今週のG1はもちろん、来春以降のG1でも
ヒロインになりそうな「悠」の心身を備えています。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の81歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会会長。
JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。
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