時代はサンデーサイレンス旋風の真っただ中だった。クラシックの主役はSS産駒のスペシャルウィーク。皐月賞と菊花賞を「セイウンスカイが勝った二冠」ではなく、「スペシャルウィークが負けた二冠」と記憶する人も少なくないだろう。
対するは名だたる大種牡馬の仔である外国産馬。グラスワンダー、アグネスワールド、そしてエルコンドルパサー。日本と世界を近づけたワールドホースの活躍は二冠馬を日陰に追いやる勢いがあった。
世界的な良血馬もいた。G1競争7勝馬を母に持つキングヘイロー。実績ではセイウンスカイに劣ったが、種牡馬としては良血を武器に逆転した。
SS産駒でも、外国産馬でも、良血でもなかったセイウンスカイの演じた逃走劇は、「有名ブランドの良血馬がお決まりのように勝つ時代」への反逆だったのか。いろいろと世の中が見えるようになって初めて「あいつすごかったんだな」と思える、そんな味のある馬だったと思う。