日本ダービーの実況を16年間担当した長岡一也が競馬と人生観を語る
長岡一也
本音を言えばこうなるのではないか、一つだけ教えてください、今度こそなんとかしたいのですと。希望を失いかけたとき、ふと言いたくなるこの言葉。競馬とつき合っていると、自分のあからさまの...
桜の蕾のふくらみが気になり出した。咲きそうなころあいを予想するのは邪気が無く楽しいのだが、満開の木々の下での大騒ぎは好きな方ではない。万事、その風物は離れて楽しむべきと思う。上品さ...
だいたいが愚かで怠けてばかりいるので、わずかの時間を惜しむことは少ない。刹那は無意識のうちに過ぎている有様だから、これでは一生の終わりはたちまちやってくる。永井路子さんの「徒然草」...
競馬とどう向き合うか、よく考えてみるとなかなか面白い。日常茶飯の中にある競馬、この不確かなものと付き合ったのが運の尽き、どうせ思い通りにならないのだから、あきらめないで精進するしか...
信じて待つ、レースに臨むとき、この強い言葉をどれほどこの心に言い聞かせてきたことか。迷いを断つには、とにかくこれしかない。競馬は、ひとつひとつのレース毎にサイを投げているようなもの...
太宰の小説の冒頭にこんなのがある。とても身に染みるのだ。「言えば言うほど、人は私を信じてくれません。逢うひと逢うひと、みんな私を警戒いたします」と。惨めとしかいいようがありません。...
不安な世相だからこそ、互いの絆を求める思いは強くなる。繋がり合い関わり合って生きていきたいと願う。人の自然な姿は、支え合って共に歩むところにあると言っても良く、誰も孤独では生きては...
真実は一つ、正解は一つとは言っても、競馬の場合は、自分に都合よく思い込んでいるのだから、そうならないことの方が多い。何が真実なのかと考えても、自分の見ていること、記憶していることが...
世の中には、思わぬ出来事や避けることのできない変化がよくある。変わらず、このままでいいと思っても、なかなかそうさせてはくれない。やるべきことが次々とあらわれるのも理由のひとつだが、...
詮ないこととわかってはいても、なんとかならないかと願っているのが凡人の常。叶う筈がないのに繰り返しているのだ。亡き人に対する思いは、その最たるものはないだろうか。いくら、もう一度会...
もっと心を養うようにしなければ、競馬は時折そう感じさせる。レースが終わった瞬間に訪れる心の変化。それをどう自覚するか、心を養う修行をするとすれば、そこではないかと思う。この心身にこ...
その可憐な姿に加え、香りの良さで、寒さの中にも爽やかさを与えてくれる水仙。寒い時期の植物の水仙は、温かい場所では花が開くのが早く、数日のうちに散ってしまう。だから、長くゆっくり楽し...
年末年始に伴い、12/31(水)のコラムは休載させていただきます。ご了承ください。次回は1/7(水)から再開いたします。
あることを繰り返し続けるうちに、ひとつの心境に到達することがあると、よく言われる。もしかしたら、そうなることを願って生きているのかもしれない。人は、本来は無一物なのだから、雲に漂う...
国語力をつけなければと、ようやく世の中が動き出したようだ。競馬ファンとてその一員なのだから、正すべきところは正すの精神を大切にするのは当然。それがどうしたとは言わずに、世の中の先頭...
競馬の中には、人がかかりやすい病の処方箋がかくされていると、毎週自分を鼓舞している仲間たちがいる。本人は気づいていないのだが、そう見えてしまう。万事が面白くないと不平や不満ばかり述...
スタンドの大観衆の声は、実に正直だと思う。双眼鏡で馬群を追いレースをしゃべっているとき、クライマックスを演出してくれるのがその声援なのだが、その声は時折、レース実況をも後押ししてく...
それぞれの顔のうしろは、互いに覗くことはしない。それが生きていく上でのルールみたいなものだ。競馬場は、そのことがしっかり生きている場所だと思う。あの群衆とともにいると、しかも、レー...
あるのは悩みだけ、これが運命だ、こう言い切ってしまえば楽だ。大なり小なり、悩みのない生活なんてある筈はないし、むしろそれを励みとした者に光明が差すのだとは、様々な事柄が教えている。...
競馬の日には人の心が派手になる。誰とでも友達になれてしまうから面白い。しかし、話が弾むほど一生懸命になるから、いいことがあればともかくも、大抵は打ちのめされるので捨てられた気分で終...
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