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シャーガーC観戦記

  • 2008年08月12日(火) 23時50分
 8月9日にアスコット競馬場で行われた「シャーガーC」。日本代表のユタカ・タケは、思う存分その存在感を世界に示すことが出来た。

 当日のアスコットの入場人員は、3万3115人。前年の2万7004人を大幅に上回る、シャーガーCデイのレコードだった。欧州競馬における前半戦の総決算「キングジョージ」デイの入場人員が、例年2万5千人前後だがら、これを遥かに上回る観客がつめかけたのだ。日本の感覚からすると大した数ではないかもしれないが、英国のスタンダードからすると、滅多にない大観衆である。しかも今年のシャーガーCデイはお昼前から雨が降りそぼり、屋外イベントに適した天候とは程遠かったのに、これだけの観客が集まったのは、私にとっても大きな驚きであった。

 要因はいくつかあるが、まずは今年の招待騎手が話題性に富んでいたことが挙げられる。今年初めに相次いで通算1万勝の大記録を達成した、南米のホルヘ・リカルド騎手と北米のラッセル・ベイズ騎手の初顔合わせは、競馬サークルを超えた話題となった。

 更に、レース終了後に場内のオールド・パドックで開催されたロック・コンサートの集客力も、すさまじいものだった。このところ英国では、競馬場でコンサートを催すのが流行りとなっており、夏の時季にニューマーケット競馬場で毎週金曜日に行われているロック・コンサートも、1000ギニーや2000ギニー当日を上回る観客を集めている。シャーガーC当日のアスコットにおけるコンサートは、「80年代の名曲が甦る」と銘打って、バナナラマをはじめとした人気バンド8組が共演。入場料は、プレミアチケット30ポンド、一般チケット20ポンド(16歳以下の子供は無料)とお高めだが、これで競馬とコンサートの両方を楽しめるのであれば、夏の1日を楽しむ出費としてはむしろお得である。

 もう1つ、大観衆を集めた背景には、アスコット競馬場の日頃の営業努力があることも見逃してはいけない。

 この日のアスコットは、年に5回催される「ファミリーデイ」にあたっており、前述したように16歳以下の子供は入場無料。第1レースが始まる前には、入場した子供たちを対象にして、バックヤードを含めて場内を案内して廻る「コルツ&フィリーズ・ツアー」が催されたり、同じく子供たちを対象として、競馬場内の緑豊かな自然を利用した「テディーベア・ピクニック」が催されたりと、次世代の競馬ファン育成を目的としたファン・サービスが展開されていた。

 だから、「シャーガーC」開催前に行われた参加騎手のサイン会に、ファンが作った500人以上の行列の、半ばが両親に手を引かれた子供たちであった。そんな彼等が、我れらがヒーローであるフランキー・デトーリのサインや、遥々日本からやってきた武豊騎手が書く漢字のサインを、歓声を上げながら受け取るのである。

 そんな雰囲気の中で行われたシャーガーCで、武豊騎手は2勝を上げ、個人総合第2位に入る好結果を残した。実を言えば、抽選の結果、武騎手に割り振られた騎乗馬は、はっきり言えば恵まれたものではなく、大手ブックメーカーのラドブロークスが売っていた「誰が個人優勝するか」という賭けでは、倍率34倍で出場12騎手中で最も人気薄であった。

 そんな前評判を覆して大健闘した武豊騎手は、英国の子供たちの間でもヒーローになったはずである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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