今回は指名に役立つ話というわけではないが、レースを見ていて感じた話をしたい。
札幌開幕週に恒例でもある芝1800mの新馬戦が行われ、
ダノンヒデキが1着した。
ダノンヒデキはダンスインザダーク産駒、2着
ロイヤルクリッパーはアグネスタキオン産駒、3着
ヴァンクリマはネオユニヴァース産駒。すべてSS系である。
レースは1000mの通過が1分05秒1で、上がりが12.4-11.3-11.5秒。単なる前残りに近い形でもあったが、同時に上がり勝負に強いSS系の強さが生きたレースだった。
……と思ったのだが、心配になって調べてみると、その解釈は正しくはないようだ。
北海道シリーズで最初に芝1800mの新馬戦が組まれたのは、1995年のことである。まだ札幌→函館の順だった時代で、最初の勝ち馬は後の皐月賞馬、イシノサンデーだった。
翌年は勝ち馬がメジロブライト。1000mの通過が1分12秒0(6Fの通過ではない)、勝ち時計が2分01秒6(2000mではない)という伝説のレースである。
その後、さすがに14秒台のラップを連発するようなレースはなくなったが、やはり2歳馬のデビュー戦で距離が長いとなると騎手も慎重にレースを進めるわけで、どうしてもスローペースになりやすい。そして、上がり勝負に強いSS産駒はそこで好成績を挙げているようなイメージがある。
しかし、調べてみるとそうでもない。北海道シリーズの2歳芝1800m新馬戦はダノンヒデキが勝ったレースまでにのべ57レース行われているのだが、そこにおける全馬平均の勝率は9.4%。それに対し、系統別の勝率は以下のようになっている。
・サンデーサイレンス系 9.6%
・ミスタープロスペクター系 12.5%
・ロベルト系 12.1%
・グレイソヴリン系 13.2%
実はSS系は「世間並み」であり、他の主要系統と比べて勝率が低いのだ。
しかも、サンデーサイレンス直仔の勝率が15.2%だったので、後継種牡馬の勝率はもっと低い。7.5%で、世間並みより下ということになる。
ちなみに、これが「札幌・函館以外の芝1800m2歳新馬戦」ということになると話が一変する。
98年以降の10年間でのべ148レースが行われているのだが、SS系の勝率は12.7%で、全馬平均の8.3%を大きく上回っている。
SS直仔が勝率26.9%と強すぎた面はあるが、それを排除しても勝率10.4%で平均を上回る。
結局、札幌と函館の芝がダメなのか?というとそうでもなく、短距離の新馬では好成績を挙げている。つまり展開や路面が複雑に絡んだ結果、起きている事象なのだろう。
だからなんだと言われそうな話ではあるが、とりあえず馬券には生かせそうである。
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。
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