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公開調教における厳しい制限

  • 2008年09月09日(火) 23時11分
 アメリカにおける2歳トレーニングセールは、公開調教で極めて速い時計が出ることで知られているが、来年からは少しその光景に変化が見られることになりそうだ。と言うのも先週、アメリカを代表する4つのセリ会社、キーンランド、ファシグティプトン、バレッツ、オカラブリーダーズセールス社が、共同で声明を発表。来年から、公開調教におけるムチの使用に厳しい制限を設けると宣言したのである。あわせて、前肢に歯鉄を履かせることも禁止されることになった。

 公開調教における「時計の出しすぎ」が問題視されるようになって、既に10年以上になろうか。化骨の終わっていない2歳の春に、時には1F10秒を切るような速さで走るのは、いかに調教技術が進歩した昨今であっても、馬に過度の負担を強いているのは明白。それで壊れてしまう馬が後を絶たない上に、公開調教時の事故も少なからず発生しており、人馬の安全のためにも何らかの歯止めをかけるべきという声は、売る側、買う側の双方から聞こえていた。

 だがその一方で、2歳市場には相も変わらず、速い時計を出せば高く売れるという図式がはびこっており、購買側が時計の速い馬に食指を伸ばす以上、販売側もそれなりの育成を施さざるを得ないという、いたちごっこが続いていたのである。

 今回、合意への流れを作ったのは、ジョッキークラブだった。ジョッキークラブでは現在、各州の競馬委員会に対して、2歳戦における前肢への歯鉄使用禁止を奨励しており、かなりの州が既にこの勧告に添った競馬運営を行っている。競馬で使わないように奨励されているものが、セールでは自由に使えるというのはおかしな話で、ジョッキークラブはセールを主催する各社に対して、公開調教でも禁止にしませんかと打診。これを受け、大手4社はコンサイナー側とも話し合いを持った上で、今回の決定を見ることになったのだ。

 ムチの使用制限についての詳細は、今後煮詰めていく方針だ。ムチには、速く走らせるため以外にも、真っ直ぐ走らせるためだったり、教育的な目的で使われるケースもあるため、一概に使用を禁ずるのは現実的でない。しかし、相当厳しいルールになることが予想されており、守らなかった騎乗者には罰則も用意されることになっている。

 アメリカの大手4社は今年、2歳セールにおけるステロイドの使用禁止でも合意を見ており、公開調教と2歳市場はかなり健全化されることになった。

 新ルールが適用される最初のセールは、来年2月10日にフロリダで行われるオカラブリーダーズセールス社主催のフェブラリーセールの予定。このところめっきり日本人購買者の足が遠のいているアメリカの2歳トレーニングセールだが、これを機に見直す馬主さんや調教師さんが出てくるかもしれない。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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