スマートフォン版へ

凱旋門賞へ向けた3つの前哨戦

  • 2008年09月16日(火) 23時50分
 9月14日にパリ近郊のロンシャン競馬場で行われた凱旋門賞へ向けた3つの前哨戦は、いずれも勝つべき馬が優勝。10月5日に行われる第87回凱旋門賞は、役者が出揃い、いつの年にも増して層の厚い出走メンバーが集まることが確実となった。

 まずは、牝馬によるG1ヴェルメイユ賞。焦点は、このレースの1番人気で、この段階で凱旋門賞へ向けた前売りでも1番人気に推されていたザルカヴァ(牝3歳)が、どんな競馬をするかに絞られていた。ザルカヴァは、フランスにおける春の2冠牝馬である。しかも、仏1000ギニーで2着に退けたゴールディコーヴァが、その後、古馬も交えた牝馬によるマイルG1ロスチャイルド賞で、前年の欧州牝馬マイル女王ダルジナを斥けて優勝。ゴールディコーヴァは返す刀で、仏国マイル路線の総決算G1ムーランドロンシャン賞でも、牡馬や古馬を破って優勝するという大活躍を見せたのだ。更に、仏1000ギニー3着馬ハーフウェイトゥヘヴンもその後、G1愛1000ギニーを制した後、10f路線で古馬を破ってG1ナッソーSに優勝。今年の欧州3歳牝馬世代はレベルが高いと認識され、中でもピカイチの実力を持つザルカヴァは、自身は夏休みを楽しんでいる間に、評価が急上昇していたのであった。

 彼女にとって懸念材料だったのが、血統から来る「距離」と「成長力」に対する不安だった。ザルカヴァの父ザミンダーは、アンドレ・ファーブル厩舎からデビューし、新馬、距離6fのG3カブール賞と連勝。ところが、現役生活で上げた勝ち星はそのカブール賞で最後で、3歳夏にジャックルマロワ賞で5着に敗れると、早々に引退。ここまで出した産駒も、前出のダルジナをはじめほとんどがマイラー。父系はミスタープロスペクターの直系で、専門家の中にも「ザルカヴァにロンシャンの2400mは無理」と断言していた者がいたほどだった。しかも、9日(火曜日)に行われた最終追い切りの動きがイマイチで、管理調教師アラン・ド・ロワイヤデュプレも「ここはひと叩き」と発言。周辺からは「彼女のピークは、3歳春だった」との声も聞かれる中で迎えたのが、ヴェルメイユ賞だった。

 ところがザルカヴァは、休み明けをものともせず、2400mのヴェルメイユ賞で後続に2馬身の差をつける快勝。73年のアレフランス以来となる、1000ギニー・オークス・ヴェルメイユの完全制覇を成し遂げたザルカヴァの、凱旋門賞本命の座はこれでほぼ当確となった。

 続く、3歳の牡馬と牝馬によるG2ニエル賞。こちらは、デビューから無敗の5連勝でG1仏ダービー制覇を果たして以来、3か月半ぶりの出走となったヴィジョンデタ(牡3歳、父チチカステナンゴ)が、1番人気に応えて快勝。ザルカヴァ同様、デビューからの連勝を6に伸ばした。ただし、楽勝だったザルカヴァに比べて、こちらは2着馬アイディアルワールドとハナ差の勝負。アイディアルワールドは重賞未勝利馬だけに、ヴィジョンデタにとっては評価を高めるパフォーマンスとはならなかった。

 続いて行われた、4歳以上の牡馬と牝馬によるG2フォワ賞は、ザンベジサン(牡4歳、父ダンシリ)が優勝。1年前のこの日は、1番人気に推されたニエユ賞で3着に敗れていただけに、1年越しのリベンジを果たす形となった。このザンベジサン、昨年7月にG1パリ大賞を制して以来、前走サンクルー大賞まで5連敗中だったのだが、ここでようやく連敗記録にストップをかけることが出来た。

 3つの前哨戦を受けて大手ブックメーカーは、ザルカヴァを2.5倍から2.75倍のオッズで凱旋門賞の1番人気に支持。各社2番人気は、6月29日のG1サンクルー大賞でユームザインの2着に入って以来休養に入り、凱旋門賞はぶっつけ本番となるソルジャーオブフォーチュンで、オッズは5倍から6倍だから、目下のところはザルカヴァが1頭だけ抜けた1番人気と言えそうだ。

 以下、キングジョージを含めて今季G1・5連勝のデュークオブマーマレイドが7倍前後、ヴィジョンデタが8倍から10倍で続き、メイショウサムソンは17倍から21倍で7番人気から9番人気という評価となっている。

毎週、2歳馬を格付け!丹下日出夫の「番付」がnetkeibaで復活!

参加無料!商品総額50万円!netkeibaPOG大会「POGダービー」が開幕!

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング