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2008年度カルティエ賞発表

  • 2008年11月18日(火) 23時50分
 ヨーロッパにおける代表的な年度表彰の1つ「カルティエ賞」の授賞セレモニーが、11月17日(月曜日)夜、ロンドンのグロスヴェナー・ハウス・ホテルで行われ、08年度の欧州年度代表馬にフランス調教の3歳牝馬ザルカヴァが選出された。

 アガ・カーン殿下の自家生産馬ザルカヴァの08年の成績は5戦5勝。2歳時を含めれば7戦7勝という、完璧な成績を残した。

 08年のキャンペーンを、ロンシャンの1600mのG3ラグロット賞からスタートさせたザルカヴァ。続く仏1000ギニーも完勝したのだが、この時彼女に2馬身水をあけられ完敗したゴルディコヴァが、その後ムーランドロンシャン賞やBCマイルを制したことから、ザルカヴァがそのままマイル路線を歩んでいたとしても、チャンピオンとなったことは確実である。

 だが、距離を伸ばして仏オークスを目指すことになったザルカヴァ。父ザミンダーが、現役時代1200mまでしか勝ち鞍がなかったことから、距離を不安視する声もあったが、これを嘲笑うかのように2100mの仏オークスを快勝。秋にはさらに距離を伸ばし、2400mのヴェルメイユ賞と凱旋門賞を連勝したのだから、驚くべき多才さと言えよう。

 ザルカヴァの5代母が、「ターフを舞うバレリーナ」と謳われた20世紀の名牝プティトエトワールで、プティトエトワールが残した唯一の牝馬ザーラを通じて継承された血脈の持ち主であるというエピソードは、もはやつとに有名である。さらに、道中後方から直線で目の覚めるような末脚を発揮するところも、プティトエトワールに生き写しと言われたザルカヴァ。母となってどんな仔を残すか、今から非常に楽しみである。

 マイルG1・4勝のヘンリーザナヴィゲーター、欧州マイル路線の総決算クイーンエリザベス2世Sと北米の総決算BCクラシックを両獲りするという、異色の2階級制覇を成し遂げたレイヴンズパス、同じく、セントレジャー制覇とBCターフ優勝という2大陸にまたがるG1制覇を達成したコンデュイットなど、精鋭揃いで大混戦と言われた3歳牡馬部門の受賞馬は、ニューアプローチだった。

 前半折り合いを欠きつつ圧勝した英ダービーの印象も強かったが、古馬を相手に愛英チャンピオンS連覇を達成した秋のキャンペーンも見事だった。殊に、84年にパレスミュージックが作ったニューマーケット10fのトラックレコードを24年ぶりに更新した英チャンピオンSにおけるレース振りは鮮やかで、68年のサーアイヴァー以来40年ぶりとなるダービーと英チャンピオンSの同一年連覇を達成したあのレースをもって、「08年を代表する3歳牡馬はニューアプローチ」との印象が決定的になったと思う。

 また、競馬サークルへの貢献が顕著なホースマンに送られる特別賞の08年度の受賞者には、ドバイの国王にして、世界有数のオーナーブリーダーとしても知られるシェイク・モハメドが選出された。

 20世紀後半から今日までの30年余りにわたって、シェイク・モハメドが競馬サークルで果たしてきた役割の重さは計り知れず、むしろこれまでこの部門の受賞がなかったことが不思議である。特に、アメリカの金融危機に端を発した世界恐慌に、各国・各地域の様々な産業が大きな痛手を被っている中、ヨーロッパの競走馬市場が下落を見ながらも何とか平静を保っていられるのは、ひとえにシェイク・モハメドとそのファミリー、友人たちによる買い支えがあったからこそである。もしも彼らの市場への介入がなかったら、ヨーロッパの競馬と馬産はいったいどうなっていたか、想像するのも恐ろしいほどだ。まずは、当然の受賞と言ってよさそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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