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増えている超スロー

  • 2008年11月28日(金) 18時00分
 突然だが、新馬の超スローが増えているような気がしたのである。

 もともと長めの2歳新馬戦は、場合によっては極端なスローになる傾向があった。夏のローカルにおいて、新馬戦に芝1800mが設定されたのは1995年のことだったが、記念すべき第一号(勝ち馬イシノサンデー)は1000mまでに13秒台のラップが4つあったし、翌年のメジロブライトが勝った新馬は1000mの通過が72.0秒、勝ち時計が2分01秒6(あくまで1800mである)で伝説になっている。

 しかし、メジロブライトのレースを笑えないレースがここにきて出てきている。11月9日の東京5R(勝ち馬ヒラボクエクセル)はラップが、
 13.0-12.5-13.8-14.6-14.0-13.6-11.9-10.9-10.9
であった。14秒台連発も凄いが、上がりが2ハロン連続で10秒台というのもなかなかない。

 このレースだけでなく、11月16日の京都5R(勝ち馬トモロポケット)あたりも13秒台のラップ4連発で、トゥリオンファーレなど後方待機組は全滅となった。ファミリズムの勝った11月1日の京都6Rも超スローだ。

 2歳夏の新馬で極端なスローが発生するのは、未完成の若駒に無理を強いたくないという意識もあるので、まあ理解できなくもない。しかし、いわゆる「王道ローテ」と言われる秋の中央場所で、このようになるのは何故なのだろうか。

 まず、ボヤく前に本当にスローが増えているのか確認するところから始めよう。私がふだん使用しているデータベースソフト『TARGET frontier』には「RPCI」という指数がある。これは上がり3ハロンとそれまでを比較する指数で、おおざっぱに50が平均ペースぴったり、数字が大きくなるほど上がりが速く、スローペース寄りということになる。

 この指数を使って、2001年以降の10〜12月に行われた芝1800m以上の新馬戦を見てみよう。

 左から、RPCIが61以上のレース数(「スロー寄り」ぐらいの感じ)、そのうちRPCIが69以上のレース数(「超スロー」)、該当期間内における芝1800m以上の新馬戦総数である。

2001年  4レース、1レース /19レース
2002年  3レース、1レース /20レース
2003年  6レース、2レース /15レース
2004年 11レース、3レース /17レース
2005年 12レース、3レース /18レース
2006年 10レース、2レース /19レース
2007年 15レース、7レース /22レース
2008年  9レース、4レース /13レース
※2008年は11/23まで

 年によって分母の数が違うが、2004年からスローが増えはじめ、昨年から劇的に超スローが増えたことが分かる。今年は数では昨年に及ばないかもしれないが、RPCIが77以上という、以前には見られなかったようなレベルのスローが新たに2レース(先述のヒラボクエクセルのレースと、10月19日の東京3R・サクラルーラーが勝った新馬戦)発生している。

 以上のことを知ったからといってファンはドラフト指名時になにができるわけではないが、「王道デビュー」が以前よりも素質馬にとってリスキーなものになっていることは覚えておいたほうがいいだろう。超スローはそれだけ紛れが多いということで、アップセットも起きやすい。

 また、素質馬について将来を見据えて差す競馬を指示するタイプの調教師が誰なのかというのも、なんらかの形で把握していければよいと思う。こちらは、場合によってはドラフト戦術にも役立つだろう。


※次回(12/5更新)は、須田鷹雄さんによる赤本紹介馬の近況レポートです。

筆者:須田鷹雄
 1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。


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