JRAブリーズアップセールへ行ってきた。
既に報じられている通り、結果としては「売れまくり」で、売却率なんと100%。2000万円以上の高額馬もぽんぽん飛び出した。
セイウンワンダー効果(あるいはツーデイズノーチス効果)なのだろうが、こういう結果を見ると、馬主さんというのは「当たりの部分」しか見ていないのだなあということをしみじみ感じる。
現3歳世代はセイウンワンダーのような大当たりだけでなく高かった馬の勝ち上がり率も比較的良いのだが、それでも現段階で獲得賞金が購買価格を超えたのは59頭中9頭(中山のセールで売れた馬だけを対象にしているので、ナイキハイグレードは含んでいない)。
現4歳世代は現時点で60頭中11頭。現5歳世代は68頭中11頭。現6歳世代は60頭中12頭。もちろん預託料等の維持費は含んでいない(一方で出走奨励金も含んでいない)ので、実際には「黒字馬」はもっと少ないことだろう。
こうして書くとJRAの営業妨害をしているようだが、馬主側が勝手に高く競り上げすぎるということが大きいのである。リーズナブルな購買をしていれば、そのぶん黒字決算しやすい。反対に適正価格より1000万円高いような値段で買ってしまったら、1勝分以上のハンデを背負うことになる。
セリ慣れしていないオーナーが現地に来ると抑えがきかなくなってしまうのだろうが、それにしても今年はちょっとオーバーヒートぎみであった。
最高落札価格馬・バヴィーラの07(牡、父タイキシャトル) 全兄がセイウンワンダー・セイウンクノイチの07(牝) 上記高馬については各所(→参照:
ニュース)で報じられていると思うので、ここでは昨年のツーデイズノーチスのような(といっても今年の状況では、あの価格で当てるのは無理。もうちょっと高いゾーンになる)穴候補を何頭か挙げておこう。
ボストンハーバー×ルナソルウィンク(牡)はフォームがいい。時計を追求しないセールだからこそ、クセのない正しいフォームで走る馬を評価する必要がある。小笠厩舎予定。
マーベラスサンデー×バトルカグヤ(牝)はツーデイズノーチスの諸江オーナーが購買。「シャドウ」の飯塚オーナーも絶賛の馬体。勢司厩舎予定。
カリズマティック×アルフレンテ(牡)は丸っきりダート血統だが、走りは素軽い。関西へ入る予定。
ボーンキング×ゲイリーアミューズ(牝)はゴール前のスピード感がよかった。それでもボーンキング牝馬で1000万超えはちょっと高いような気もするが……。
バゴ×ベーシックフジ(牡)はバゴ産駒の中では走りが軽い印象。
以上の馬たちも高馬ゾーンは避けたのだが、よりチャレンジャーな馬も一頭。
キンググローリアス×チアズフリート(牡)。「原価割れ」での売却となったが、走りは重心が低く前向き。抑えたので時計は出ていないが、それほど悪い馬ではないと思う。
最後に時計の話が出たところで思い出したが、購買者はプレビューの時計に左右されすぎのように思う。確かにダイワパッションもセイウンワンダーも1Fの時計は出ていたのだが、一方で「時計が出ていて走らなかった馬」もたくさんいる。見習騎手や競馬学校生徒が乗って馬に持っていかれてしまった時計になることもあるし、反対に体重の重いJRA職員がしっかり抑えて地味な時計になることもある(セールは、ハロン13秒前後の供覧を良しとしている)。
みんなが時計に走り過ぎているので、これからは「時計が地味でフォームのいい馬」を探したほうが、お得な購買に繋がるはずだ。
※次回は5/15(金)に更新いたします。
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。