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2008-2009シーズン総括

  • 2009年06月12日(金) 11時00分
 ルールによっては今開催末までという方もいるだろうが、ユニコーンSも終わり、今年の3歳馬については春競馬時点での結果がだいたい確定した。

 そこで今回は前年度の総括をし、これから2歳世代のドラフトという方の参考にしていただければと思う。これまでの連載で指摘してきた傾向と重複するものもあるが、その点はご容赦いただきたい。

1.SS系の強さ

 本賞金ベスト10のうち7頭、ベスト20のうち11頭がSS系。やはりSS系を外してドラフトは組み立てられない。ただし、11頭の父は5種類で、ベスト30まで手を広げるとゴールドアリュールとバブルガムフェローも加わる。かつてのSS自身やアグネスタキオンのように特定種牡馬の決め打ちはしづらくなっている。

2.クラブ馬の強さ

 ブエナビスタアンライバルドはもちろんだが、ベスト20のうち10頭がクラブ馬。これは次に指摘するポイントとも関係があると思われる。

3.セレクトセール組がほぼ全滅

 この世代のセレクトセール組でいちばん稼いでいるのは、新井牧場産のナカヤマフェスタで1050万円。社台グループの高馬ではトーセンジョーダンがよいところを見せたが、同馬は1歳セッションの出身馬。セリの華である当歳セッションの高馬は全滅だった。

 セレクトセールは商業的に成功して、NFあたりも血統的にいちばん良いクラスを上場しているのだが、現在は良血馬どうしの差が相対的に小さくなっており、セールにいい馬を回したつもりでも結果が伴わないということがあるのではないかと思う。反対に、クラブ馬が仮にセカンドクラスであったとしても(実際にはファーストクラスも入れているわけで)、そこから大活躍馬が出ることは十分にある。

 前年度のような偏りはさすがにそうそうないとは思うものの、母系の派手さに影響されすぎないように、ということは意識しておいたほうがいいだろう。

4.「腕」を重視する必要

 最初の生産馬(ジョーカプチーノ)がGIを勝ってしまったハッピーネモファーム、以前より「安馬でもガンガン走る」と評価されていたディアレストが1億円以上の馬を出してきたことは、馬に携わる人々の技術が重要なファクターになってきたことを物語っている。実際、ハッピーネモの根本代表は「SS直仔にはどう頑張っても勝てなかったが、いまは努力で勝てる時代」と語ってくれたこともある。

 一方で、肢勢に難があり道営デビューになっていてもおかしくなかったロジユニヴァースがダービー馬になったことも、ノーザンファームの「腕」を示すもの。近年のPOGでは難点がある馬をオミットしていく手法が主流だったが、これからは「でも、あの人たちがやるなら大丈夫」という発想も必要になってくる。

5.厩舎も幅広く評価する必要

 SS系の話で対象を広く取る必要について書いたが、厩舎も幅広く考える必要がある。

 本賞金ベスト10に登場する厩舎はすべてばらばら。対象期間内に5000万円以上稼いだ馬は34頭いるが、その所属厩舎は30厩舎にわたる。トップクラスの厩舎に網を張って1頭の大当たりをツモればいいという考え方もあるが、本格的な大勝を目指すならば厩舎のバリエーションもつけなければならないだろう。


 以上、いろいろ書いてきたが、現在の競馬界を一言で表すなら「戦国時代」だろう。特定種牡馬、特定生産者、特定厩舎に頼ればなんとかなるという時代ではなくなってきている。POゲーマーからセリで馬を買う本物の馬主まで、この点は意識しておく必要がありそうだ。


筆者:須田鷹雄
 1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「回収率向上大作戦」も担当している。

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