開幕週の新馬が終わったところでこの原稿を書いている。
開幕週のハイライトは、やはり
ダノンパッションの勝利だろう。超スローで折り合いを欠き、直線は行き場を失いながらも最後は地力で決着をつけた。
この後は間隔をあけて秋から始動するのではと思われるが、この馬が将来的に成功するようだと、高馬・素質馬が「地力で早いうちにひとつ勝っておこう」という傾向は強まるかもしれない。それでなくとも、今年は良血馬の多くが「えっ?もう入厩?」というような動きの早さを見せている。
そもそも、セールで7000万円台の馬が6月デビューということからして珍しい話である。調べてみると、過去に6月デビューしたセール組で一番高かったのは
テイエムテンライで7980万円(セレクトセール・税込み)。そのテイエムテンライはデビュー戦を6着と敗れ、その次走は年明けだったので、ダノンパッションは高馬がスタートダッシュに成功した最初の例ということになる。
ちなみに、税込み3000万円以上で6月デビューしたのはこれまで17頭。POG期間(3歳6月まで)の稼ぎ頭は
オースミダイドウで9500万円。1頭あたり賞金は3332万円、期間内未勝利で終わったのは
リラックススマイルだけ。こうしてみると、「高馬の超早期デビュー」は押さえておいて損はないとも感じられる。
6月だけでなく、7月デビュー組についても同様に調べてみよう。
7月デビュー組で最高価格だったのは
ダノンマスターズ。次いで
サトノエンペラーとミリオンクラスが登場している。
さきほどと同様に3150万円以上を基準にすると、該当馬は49頭。うち期間内33頭が期間内に勝ち上がり、1頭あたり賞金は2581万円だ。
ただ、この馬たちの中で購買価格とPOG活躍度の間に相関関係があるかというとそうでもない。
ピンクカメオは7000万円台だったが、
エイシンタイガーや
ストーミーカフェなどは3000万円台だ。
ちなみに6月デビュー組でも価格と結果の相関は薄いし、セレクトセールではなくHBA出身の馬がイメージ以上に混じっている。
ここに今後のヒントがあるのではないだろうか。先述したように、今後は高馬の早期デビューは増えるものと思われる。一方でそのPOG人気も高まるし、特にセレクトセール高額馬の人気はかなりのものになるだろう。
ところが、人気には加熱しすぎるというリスクもある。また、馬によっては「早く下ろしすぎて失敗」というケースも増えてくる(特にクラシックを意識するような血統)はずだ。
そうなったら、現時点で見えているストライクゾーン、「3000万円台で十分」「HBA組でもOK」「血統や厩舎にPOG向き要素があればなおよし」にこだわった方がお得だろう。皆がドラ1で速攻タイプの大駒を競り合っているのを尻目に、「地味な速攻(そこそこ)高馬」を下位で押さえればいいのだ。
もちろんこれは庭先の高馬やクラブ馬、マル外を無視した議論だし、もうひとつ「ドラフト前に書けよ」という問題もはらんでいるのだが、まあ来年のドラフトや赤本づくりへ向けて、備忘録的に書いておこうと思う。
※次週は村本浩平さんが登場します!
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
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