POGではなく予想の仕事で、「ネオユニヴァースは芝の1200mだと全然ダメ」という話をする機会があった。
ちなみにこの原稿を書いている7/6時点で、ネオユニヴァース産駒の芝1200mにおける成績は[1-3-2-51]。※既にデビューした今年の2歳馬も含む。
1勝も、
シセイカグヤが3歳の6月28日に挙げたものなので、ネオユニヴァースの初年度産駒はPOG期間を芝1200m以下未勝利で終わったことになる。
芝の短いところで新馬を下ろすと漏れなく失敗する種牡馬(失礼)にはシンボリクリスエスがいるが、クリスエスも新馬はともかく、未勝利ではぼちぼち芝の短いところを勝っている。それ以上にリスクがあるのだ。
ネオユニヴァース産駒は今年の2歳馬も
タガノガルーダ、
サダムシンプウと人気になった馬が芝短距離の新馬・未勝利で人気を裏切っている。こうして使ってくる陣営があるということは、現場のホースマンから見て「こなせるだろう」という感触はあるのだろう。しかしそれでいて期待に応えられないというのは、POGにおいても本物のオーナーシップにおいてもリスクだと言えるだろう。
……と延々書いたがネオユニヴァースそのものを語りたいのではなく、私が触れたいのは「人気種牡馬のリスク面」についてである。
ネオユニヴァースは初年度から大物を出して成功種牡馬と認識されているが、先述したような短距離での弱さはあるし、もうひとつ勝馬率の低さ、というかイメージほど高くないという問題もある。
現3歳世代のJRAにおける勝馬率は7/5時点で28.5%。同世代全体の勝馬率が26.9%だからそれと大差ない。社台グループ4牧場の生産馬は47.7%が勝ち上がっているのだが、そのうちネオユニヴァース産駒に限っても50.0%で、これも平均とほとんど変わらない。「イマイチだった」くらいの扱いをされているキングカメハメハの3歳(社台グループ生産馬に限らない全馬)が勝馬率42.7%だから、それと比べてもイメージと現実のギャップに気付かされるだろう。
ネオユニヴァースに限らずこういった考察は数字に基づくものだから、情報として行き渡っていくとお思いになるかもしれない。しかし現実の競馬社会では、目立つ成功例のイメージが浸透して、リスク面は見逃されることも多い。またその逆も然りである。セリ場の実感としてもそうだし、次年度以降の競馬を語る厩舎関係者、マスコミの感覚としてもそうだ。
POGにおいては、ここに大きな罠がある。牧場や厩舎関係者のコメントは経験と感覚に基づくものであり、数字の裏付けとイコールとは限らない。特に、総体的に見て「良い」と言えるもののリスク面は見逃されやすい。読者・ファンはこの点を考慮する必要がある。
※次週は吉田竜作さんが登場します!
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。
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