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シーザスターズのレイティングに注目

  • 2009年08月04日(火) 23時59分
 インターナショナル・フェデレーション・オヴ・ホースレーシング・オーソリティ(IFHA)から、今年1月24日から7月26日の半年間に行われたレースを対象としたワールド・サラブレッド・ランキングが発表され、3歳馬のシーザスターズ(牡3歳)が首位に立った。

 評価の対象となったのは、その後キングジョージを勝つ古馬の代表格コンデュイットらを破って優勝した7月4日のエクリプスS(G1・10f7y)で、レイティングは131だった。

 131というのは、2008年の年間チャンピオンと認定されたカーリンとニューアプローチの130を上回る高評価。3歳馬で130の大台を突きぬける数値を獲得したのは、2003年にダラカニが凱旋門賞を制した際に132を獲得して以来のことで、これを7月初旬の段階でマークしたシーザスターズは、まさに歴史的名馬への道を邁進していると言えよう。

 ランキングの2位も、エクリプスSでシーザスターズから1馬身遅れの2着に入ってレイティング128を獲得したリップヴァンウィンクル(牡3歳)だから、今年のエクリプスSが極めてレベルの高い戦いであったと評価されたわけである。

 更に、横並びの3位に入った1頭が、6月28日に行われたアイリッシュダービー(G1,12f)でレイティング127を獲得したフェイムアンドグローリー(牡3歳)だから、今年の3歳世代は高水準であることが、公式ハンディキャッパーたちによって認定されたことになった。

 実を言えば、3歳と古馬が一緒に走る混合戦が本格的にスタートする以前の、愛ダービー終了時点(6月末の段階)では、むしろ懐疑的な見方が囁かれていたのが、今年の欧州における3歳牡馬の水準だった。

 今年は英国に20年ぶりの2冠馬シーザスターズが誕生したわけだが、そのシーザスターズの強さは認めつつ、周りが弱いから傑出した2冠馬が誕生したのだと、穿った見方をする関係者も見られたのである。

 あるいは、シーザスターズやフェイムアンドグローリー、マイル路線で言えば愛2000ギニーとセントジェームスパレスSを連勝したマスタークラフツマン(牡3歳)といった、戦線のトップを走る馬たちを相当の実力者と認めつつ、その下となると力が劣り、層は厚くないと見る関係者も少なくなかった。

 その背景にあったのが、英国を本拠地とする3歳牡馬勢の不振である。振り返れば6月初旬、エプソムで行われた英国ダービーの、出走12頭中8頭までが愛国を本拠地とする遠征馬で、結果も上位5着まで愛国調教馬が独占。英仏愛という欧州主要3か国の牡馬の3歳クラシックを通じて、英国調教馬は勝ち星なしに終わり、愛ダービーにいたっては英国からの遠征馬ゼロという、近年では見られたことのない低迷ぶりを露呈したのである。

 英国勢がこの体たらくなら、層が厚いわけがなく、従って全体のレベルには疑問符が付く、というのが、愛ダービー終了時点で「3歳牡馬弱体説」を唱えた人たちの論拠であった。

 これを覆したのが、先ほどから話に出ているエクリプスSであり、エクリプスS上位馬たちのその後のパフォーマンスであった。エクリプスSで、シーザスターズに5.1/2馬身差の3着に敗れたコンデュイット(牡4歳)は、昨年秋に英国のセントレジャーと米国のBCターフを連勝し、今季の欧州中距離路線を背負って立つと目されていた馬である。3歳と古馬の間には5kgの斤量差があったとは言え、そのコンデュイットに5.1/2馬身という絶対的な差をつけてエクリプスSを制した段階で、今季の中距離路線最強馬は3歳のシーザスターズであることが明白になった。

 そしてその後、キングジョージをコンデュイットが快勝したことで、その評価は揺るぎないものとなったのである。

 これに更にダメを押したのが、7月29日に行われた真夏のマイル決定戦・サセックス(G1・8f)の結果だった。3歳のリップヴァンウィンクルが、古馬の現役最強マイラー・パコボーイ(牡4歳)に、2.1/2馬身という決定的な差を付けて快勝したのである。サセックスSは、今回発表されたワールドランキングの対象期間から外れているため、評価の対象となっていないが、次回発表されるランキングではマイル部門でリップヴァンウィンクルが相当に高い数値を与えられることになるはずだ。

 一方、サセックスSの結果を受けて、シーザスターズの評価に早速修正を加えたのが、独自にレイティングを付けているタイムフォーム誌である。それまで133だったシーザスターズの「タイムフォーム・レート」を、3ポンド上方の136に修正。過去10年のレンジで捉えると、140を獲得したドバイミレニアム、137を獲得したモンジューに次ぐ、第3位という評価を与えることとなった。

 シーズン後半に行われる主要レースを通じて、シーザスターズの数字がどこまで上がっていくか、興味深く見守りたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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