一般に信じられている傾向として、「大型馬よりは小さめの馬のほうが仕上がりが早い」「牝馬は仕上がりが早い」といったことがある。ただ、それを数字で裏付けた話はあまり聞かない。
POGの場合、これらの概念が重要視されるのはいわゆる速攻タイプにおいてだろうから、今回は過去5年(05〜09年)の6〜8月に行われた2歳戦全体の成績を見てみよう。
まず馬体重別成績だが、400〜519kgの馬たちを20kg刻みのグループに分けた場合、重いグループほど勝率・連対率が高いという傾向が出ている。
また、1走あたり賞金でも400〜419kgのグループが55万円であるのに対し、500〜519kgのグループは142万円で、この間のグループもそれぞれ「重いほど強い」という内容になっている。
牝馬ではここまで極端ではないものの、400〜479kgまでに限っては同様に「重いほど良い」という傾向がある。そのひとつ上のクラスはあまり成績が下がらないが、500kgに乗ってくるとやや「重すぎ」の傾向がみられる。
牡馬も「重すぎ」のリスクはあり、520kgに乗ってくるといきなり成績がガタガタになる。5年間で54頭・71走しかないのでデータ的に有意かどうかは微妙だが、そもそも年に10頭くらいしか該当馬がいないことからして、この時期には仕上がってこないことを示していると言えるだろう。
ということで、サイズに関してはあまり過剰すぎない限り、「大きい=仕上がり遅い」というリスクを見込まないでいいように思う。競馬に使うときに500kg前後ならば全く問題はない。
調べたついでに、「大きくても大丈夫な血統」というものがあるのかどうかも調べてみた。牡馬で500kg以上、牝馬で480kg以上という大型グループについて種牡馬別成績を調べたところ、サクラバクシンオー、グラスワンダー、マンハッタンカフェ産駒は成績がよく、クロフネやタイキシャトル産駒は悪い。ただ、系統や父の現役時代馬体重とはあまり相関性がないので、あまり意味の無いデータかもしれない。
もうひとつ、牝馬は仕上がりが早いのか?という問題だが、全馬を対象にしたデータでは、牡馬牝馬による差はない。勝率・連対率・1走あたり賞金とも牝馬のほうが少しだけ上だが、まさに「少しだけ」という程度であり、ドラフト戦略に大きな影響を与えるほどではない。
逆に言うと、この時期の2歳戦が牡馬牝馬同斤となっていることには十分な合理性があると言える。長年の知恵というのは、侮れないものだ。
「どちらがいい」という結論にはならないものの、ドラフトでは牡馬の方が人気になるものなので、早熟でいいと割り切って指名する馬については牝馬優先……という戦略はあってもよさそうだ。
※次週(9/11)は、吉田竜作さんが登場します!
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。
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