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本当に難しい、馬のメンタル面

  • 2009年10月02日(金) 11時00分
 9/27(日)、中山6Rの新馬戦を見て、大げさな話だが馬という動物そのものについてしみじみと考えた。

 考えるきっかけになった馬は1番人気で3着だったサイレントメロディである。若干余裕残しの馬体ではあったが、馬のデキそのものはさすがという感じで、ファンが1番人気に支持したのも納得のいくものだった。

 そしてその走りはというと、なんとも説明の難しいものだった。

 別にスタートが極端に悪かったわけではなかったのだが、気が付けば最後方。向正面でじわじわ進出していくのかと思えば、首を上げて嫌がるそぶりを見せる。

 これは人気の素質馬が飛ぶパターンかな……と思って見ていると、いつの間にか先頭を射程圏内に捉える好位置まで進出しており、最後は2着馬にハナ差まで迫る3着とまずまずの結果は残した。

 ここで普通の競馬評論文脈だと、「一度使われて絞れるだろうし、競馬を経験したぶん次はスムースに走れるはず」ということになるわけだが、そうはいかないのが馬というものの難しさである。今シーズンの2歳馬でいうとアドマイヤテンクウが好例で、馬は人間が好ましいと思う方向に進んでくれるとは限らない。

 もっと不可解な例もある。サイレントメロディの一週前にデビューしたセブンスコードだ。この2頭は社台ファームで同じ厩舎にいてともにエース級と目されていたのだが、セブンスコードは(もともと稽古の動きが軽くはなかったことを差し引いても)強いとか弱いとかいう話ではなく、内へもたれっぱなしで武豊騎手がなにもできないままに終わってしまった。

 直後に平田師と食事をする機会があったので同馬の話もしたのだが、レースであのような癖を見せた理由は本当に分からないし、事前の兆候も隠しているわけでなく本当に無かったとのことだった。次走以降はハミを変えるなどしてみるとのことだったが、それが効果を発揮するかどうかは、走ってみないと分からないだろう。

 こうした馬たちの様子を見てみると、今年あたりから私が強く主張している、「結局馬はやる気が半分以上」という指摘が実際に正しいのだろうという気がしてくる。そして、フィジカルを鍛えるのはある意味簡単だが、メンタルを正しく保つことは難しいし、ファンの中には(馬を扱ったことがないので)馬のメンタル面というものを、実感をもって捉えられない人も多いことだろう。

 ディープインパクトが独特な走りをする馬だったという話は総研の先生などによって広く普及したが、それ以前にディープインパクトは「やる気のある馬だった」という点を見逃してはならない。しかし、このメンタル面というのはPOG戦略に反映させづらいぶん、顧みられることも少なくなってしまう。

 私もなんとか反映させる方法はないものかと考えたのだが、例えば中期放牧中のリーダーシップと競走成績の間にもあまり相関関係はないようだし、赤本で簡単に示せるような「理論」は作れないだろう。せいぜい、優れた育成場や厩舎という評価の中に、馬のメンタルを損なわないということも含まれるという程度だ。

 仮にファンの皆さんがこのメンタル面を利用するとしたら、過去の兄弟等を評価する際に有効だろう。

 走らなかった馬はただ「走らなかった」とくくられてしまいがちだが、本当に足が遅かった馬もいれば、メンタルでおかしくなってしまった馬もいる。後者の血統からは、ひょっこり強い馬が出てくる可能性があるわけで、全否定しないほうがよいということになる。

 こういう要素はTARGETなどで割り切れるデータにはならないので、POGメディアにも反映はされづらいはず。それだけに、個々人が自分の中で情報を積み重ねていけば、何年か後に他のプレイヤーよりも優位にたてるはずだ。

筆者:須田鷹雄
 1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「回収率向上大作戦」も担当している。


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