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これからも注目!「同じ釜の飯理論」

  • 2009年10月23日(金) 11時00分
 「同じ釜の飯を食った仲間」ならぬ、「同じ飼い葉を食べた仲間」。今年の2歳戦線では、こうした同じ牧場(育成、生産)の出身馬たちの活躍が目立っている。

 17日に行われたGII・デイリー杯2歳Sでは、ノースヒルズマネジメント生産馬であるリディル(牡2、橋口)が優勝。同じくノースヒルズマネジメント生産馬では、ラナンキュラス(牝2、矢作)もりんどう賞を勝ってオープン入りを果たしている。

 生産馬では無いものの、ノースヒルズマネジメントがオーナーとなっているサリエル(牝2、松永幹)はGIII・小倉2歳Sで1番人気に支持された実力馬。また、9月に新潟競馬場で行われたメイクデビューでは、トレイルブレイザー(牡2、池江寿)が、見事、1番人気に応えてみせた。

 また、重賞馬こそ出ていないものの、西山牧場の快進撃も目立っている。

 ニシノメイゲツ(牡2、田村)がメイクデビューからの連勝でオープンの芙蓉Sを勝利し、同じ日に行われた2歳オープンのききょうSでも、ニシノモレッタ(牝2、北出)が次に期待を抱かせるレースで2着に入ってみせた。

 マル外のセイウン軍団であるセイウンシェンロン(牡2、河野)とセイウンジャガーズ(牡2、杉浦)、セイウンオウサム(牡2、手塚)も勝ち上がり。しかも、いつでも未勝利を突破できそうな2歳馬もまだまだ控えている。

 ここからは勝手な理論ではあるが、「同じ飼い葉を食べた仲間」は、「同じ放牧地を走り回った仲間」でもある。優れた資質を持った馬が同じ世代の馬たちを引っ張ることで、レベルの底上げに繋がるというのは、コスモバルクがいた世代におけるビッグレッドファームの生産馬と育成馬(コスモサンビーム、マイネルデュプレ、マイネルマクロス、マイネルブルックがダービーに出走)。ディープインパクト世代のノーザンファーム生産馬と育成馬(インティライミ、アドマイヤジャパン、ペールギュント、アドマイヤフジ、ローゼンクロイツがダービーに出走)の活躍ともつながる印象がある。

 野球界でも「松坂世代」や「ハンカチ世代(マー君世代でも可)」からは優秀な選手が多く誕生している。競馬だけでなく、広くスポーツ界を見渡せば、「同じ釜の飯理論」はまだまだ成立してきそうだ。

 話は横道にそれてしまったが、ノースヒルズマネジメントと西山牧場に共通しているのは、どちらの牧場も「オーナーブリーダー」であるということ。旬の種牡馬を追いかけなくてはいけないマーケットブリーダーとは違って、オーナーブリーダーは時代に左右されない配合ができるだけでなく、厩舎に入るまで一貫性を持った生産育成ができるというメリットがある。

 それは諸刃の剣でもあり、生産の方向性や繁殖牝馬の血統、そして育成方針までもが画一的となっていくにつれて、時代の流れとそぐわなくなるというデメリットも生じてくる。

 だが、ノースヒルズマネジメントも西山牧場も、常に新しいことを取り入れてきただけでなく、その一方で自分たちがこれまでに行ってきた生産や育成についても見つめ返してきた。だからこそ、優れた資質を持った世代に接した時にその能力を損ねることなく、無事に厩舎へと送り出すことができたのだろう。

 POG指名馬のいない人でも、今後は2つの牧場からの生産馬、そして育成馬に注目してもらいたい。


筆者:村本浩平
 1972年北海道生まれ。大学在籍時代に「Number ノンフィクション新人賞」を受賞。現在はフリーライターとして活躍。特に馬産地ネタでは欠かせない存在。


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