POG的には中途半端な時期なので、今回もドラフト戦略につながる話というよりは「データよもやま話」のようになってしまうがご容赦いただきたい。
今年の春、ノーザンファームで世間話をしていて、デビュー時期の話になった。
POG界で「王道デビュー」と呼ばれる時期があるが、あれは夏の暑さを避けて本州へ移動した馬が似た時期に集まって来る結果、起きる現象でもある。
大事にされている馬ほど美浦・栗東近辺の夏を避けようとするわけだが、その結果として同じ新馬にノーザンファームの馬が複数出てきて潰し合いになってしまうこともある。それよりは、多少暑い思いをさせてでも、秋イチのメンバーが手薄なところで下ろしたほうが得なのでは……というような話をしたのである。抱えている頭数が多いということでは、社台ファームにしても事情は同様であろう。
そこで今回は、新馬戦でどのくらい複数頭出しが発生しているのかを見てみた。
対象とするのは、現3〜7歳世代のノーザンファーム生産馬。実際には他にノーザンファームがセールで買ってきた馬とか、大手馬主が育成に持ち込んできた馬とかもあるし、逆にセールで買い切って馬主が他の育成に持って行ってしまうケースも少数ながらある。ただ、そこまでカウントはしていられないので、単純に生産馬ベースで見ることにした。
2歳のうちの出走状況は以下の通り。
※左から、出走実レース数、2頭出し、3頭出し、4頭出しの順で表記
6月 21、3、0、0
7月 71、13、6、2
8月 48、11、2、1
9月 38、6、1、0
10月 57、12、1、2
11月 69、19、5、1
12月 66、16、3、0
たしかにこうしてみると、9月は身内の潰し合いが少ないことが分かる。10月が11月と比べてまだ少ないのも、10月前半に間に合ってくる馬が限られるからだろう。
これはPOGというより馬主さんやノーザンファームさん向けのデータだが、POGと馬券に役立つデータもある。
今回対象とした世代の新馬戦(3歳になってからも含む)でノーザンファーム生産馬が複数頭出しになったレースは165レース(出走実頭数377頭)いるのだが、まず、そのうちダートの新馬には74頭が出走して回収率が単113%・複119%。1頭だけでダートの新馬に出た馬も単93%・複95%と優秀なのだが、それ以上に高い。
もうひとつ、芝・ダートひっくるめて1〜3番人気は回収率が単71%・複87%なのに対し、4〜6番人気は単179%・複114%とプラス決算になっている。
つまり、ノーザンファーム生産馬の新馬戦は「ダートに出てきた馬」「複数頭出しの、人気が微妙なほう(人気薄すぎてもダメ)」が高回収率ということになる。誰もが主役と思うようなプロフィールの馬ではなく、そこからちょっとズラしたような馬が良いのだ。ドラフトでそれを狙うのは無理だが、馬券で狙うことはできるだろう。
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。
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