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おおいに物議を醸している2歳ランキング

  • 2011年01月18日(火) 00時00分
 1月12日に、2010年版のワールド・サラブレッド・ランキングと、ヨーロッパ2歳ランキングが発表になった。

 キングジョージ圧勝のハービンジャーが2010年のワールドチャンピオンと公式に認定されたのをはじめ、概ね予想されたレイティングとランキングとなっていたが、そんな中、おおいに物議を醸しているのが、2歳ランキングだ。

 先刻ご承知の方も多いと思うが、昨年の英国には、2歳王者決定戦のG1デューハーストSを含めて4戦4勝の成績を残した、フランケル(牡3、父ガリレオ)という大物が出現した。デューハーストSの2.1/4馬身差勝ちというのも圧倒的かつ印象的なレース振りだったが、一走前のG2ロイヤルロッジSが10馬身差、その前に一般戦を勝った時が13馬身差と、桁違いの強さを発揮してライバルを圧倒しており、今季の3歳クラシックへ向けて不動の本命と目されているのが、フランケルである。当然のことながら、2歳ランキングでも堂々首位に立つものと、ファンも関係者も思っていた。

 ところが、発表された2歳ランキングは、誰もが予想していないものとなった。フランケルは確かに、レイティング126をもらい、2歳部門の首位に立った。126というのは、2001年に愛仏英米4か国のG1を含めて7連勝を飾ったヨハネスブルグと、2007年に英愛2か国のG1を含めて5連勝を飾ったニューアプローチと並ぶ、今世紀に入って以降の2歳最高レートだから、相当に高い評価である。

 では、何が物議を醸しているのかというと、実はフランケルの他にもう1頭、2歳の首位に並んだ馬がいたのである。

 フランケルと同じ126という、今世紀2歳最高レートを獲得したのは、ドリームアヘッド(牡3、父ディクタット)だ。2歳時の成績4戦3勝。7月16日にノッティンガムのメイドン(6F)を9馬身差で制してデビュー勝ちを飾った後、いきなりドーヴィルのG1モルニー賞に挑んで、G1制覇を達成。続いてニューマーケットのG1ミドルパークSも再び9馬身差という圧倒的レース振りで2つめのG1を手中に収めた後に駒を進めたのが、10月16日にニューマーケットで行なわれた英国における2歳王者決定戦G1デューハーストSだった。

 すなわちここで、互いに3戦3勝同士、いずれも前走は圧勝という、かなりエキサイティングな状況で、ドリームアヘッドはフランケルとの直接対決を迎えたのであった。

 結果は、前述したようにフランケルが優勝。一方のドリームアヘッドは、フランケルに7馬身離された5着に大敗した。

 フランケルの能力がドリームアヘッドを遥かに凌駕することは、デューハーストSを見れば明白であり、その2頭の評価がなぜ横並びであるのかと、異議を唱える声がファンからも関係者からも沸き起こったのは、当然の成り行きと言えよう。

 改めてご説明するまでもないことかもしれないが、ランキングというのはその馬のベストパフォーマンスに与えられた評価によって決定されるものだ。更に言えば、他馬との着差が重要な評価ポイントとなるのがレイティングで、そういうメカニズムであるゆえ、派手な勝ち方をする馬には高くなり、地味に渋太い勝ち方をする馬には辛口になるという特性を持っている。

 ドリームアヘッドに与えられた126は、9馬身差で制したG1ミドルパークSにおけるパフォーマンスに与えられたもので、別の言い方をすれば、ミドルパークSにおけるドリームアヘッドと、デューハーストSにおけるフランケルが、同等の強さであると、公式ハンディキャッパーは評価したのである。

 だが、直接対決であれだけ明確に優劣のついた2頭が横並びというのは、ファンにとっては納得しがたいことであろう。

 今、巷間なされているのは、ミドルパークSがそれほどレベルの高いレースではなかったのではないか、という指摘だ。

 ミドルパークS当日の馬場状態はSoft(重)で、シーズン終盤を迎えたニューマーケットの馬場は、相当に力の要る状態だった。日本でも、道悪になると巧拙がはっきりとし、大きな差が付く競馬が多くなるが、この日のニューマーケットも、2歳牝馬による6FのG1チーヴァリーパークSが4.1/2馬身差、3歳以上1マイルのG3ジョエルSが7馬身差、3歳以上12Fの準重賞ゴドルフィンSが6馬身差、距離7Fの2歳メイドンが5馬身差、3歳以上の距離10Fのハンデ戦にいたっては19馬身差と、1・2着馬の間には軒並み大きな差が付く競馬が展開されたのである。ミドルパークSの9馬身差も、これをそのまま鵜呑みにするべきではなく、勝ち馬のレイティング126は高過ぎるのではないかと言われているのだ。

 公式ハンディキャッパーの評価は、正当なのか、不当なのか。3歳シーズンにおける両馬のレースぶりが、答えを出してくれるはずである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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