スピード型のマグナーテンがそのあふれるスピード能力をフルに生かし、なおかつ先行して粘ることは、あまりにも当然の推理で、結果もその通りだった。前半の1000m通過は59秒2。理想の平均ペースで、後半を46.9−34.7−11.4秒でまとめてみせた。
心配したのは、岡部騎手が例によってタメて進み、引きつけてスローの逃げに落とすのではないかと懸念された点だが、最大の殊勲はアメリカンボス=江田照騎手。気合を入れて先行の構えをみせ、マグナーテン=岡部騎手に意味のないスローに落とすことを許さなかった。単調になりがちな中山内回り1800mの少頭数を盛り上げ、味のあるレースにしたのはギリギリまで2番手で粘った5番人気のアメリカンボス(ブリンカー装着)だろう。
マグナーテンは昨年、東京の毎日王冠で1分45秒5。ゴール寸前、50mぐらいまで先頭だった。それが中山の内回り1800m。マイペース必至なのだから、変にスローに落とさない限りごく順当な逃げ切りだろう。気分良く自分のペースで最後11.3ー11.4秒。これではつかまらない。
天皇賞のステップレースであることを考えると、2着したエイシンプレストンと、小差4着サンライズペガサスは、上々のステップともいえるが、問題はある。天皇賞もおそらく逃げ=先行型は59−59秒、1分58秒ぐらいでまとめるだろう。エイシンプレストンも、サンライズペガサスも、マグナーテンの逃げを黙って追走し、いいようにホンロウされるしかなかった。2000mの中山の天皇賞でもおそらく同じだろう。自分で先行馬をつぶすことができない危険がある。今回も伏兵の形づくりをしたアメリカンボスをやっとつかまえたエイシンプレストンと、アメリカンボスさえつかまえられなかったサンライズペガサスのわけで、自力で2000mを1分58秒そこそこで乗り切るのは難しい危険を示している。秋の天皇賞は時計、展開面で面白い。