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池江泰寿調教師インタビュー後編

  • 2011年04月28日(木) 12時00分
メジロマックイーン、トゥザヴィクトリー、ステイゴールド、そして三冠馬ディープインパクト…池江泰郎調教師が作り上げた名馬は数知れず。その名伯楽の引退は、競馬界にとって大きなことでした。家族であり、師弟関係でもある池江泰寿調教師には、どのように映ったのでしょうか。

◆名門の看板を背負って

:お父様の池江泰郎調教師が今年2月末で引退。一番近くにいらした先生には、どういうふうに映られていますか?

池江 :とにかくもう、さびしかったですね。僕はずっと「ホースマン池江泰郎」を見て育ってきましたので。今でも評論家として活動していますが、直接馬に携わっているわけではないですしね。それと不安もありましたよね。今までは父のサポートもあって、良い馬をたくさんやらせてもらってきましたから。


:ご家族としても、そばでいろんな顔を見ていらっしゃると思いますが、泰郎先生もさびしそうですか?

池江 :父は中学校を出てから55年間ずっと競馬に携わってきて、55年間ずっと突っ走ってきたんですよね。だから、口では「ちょっと落ち着きたい」とは言っていますけれどもね。でも、今でもトレセンや競馬場に顔を出していますし、昨日まで北海道にも一緒に行っていました。

:じゃあ、少しはゆったりされていますけど、馬に関わるところはあまり変わっていないですか?

池江 :それはあるみたいですね。ちょっと違うのは、最近馬券の買い方を覚えたって喜んでいました(笑)。

:そうか、これからは馬券が買えるんですね。泰郎先生と泰寿先生は、同じ競馬という強いきずなで結ばれているというのが素晴らしいですよね。

池江 :厳しいことも言われますが、そういうことを言ってくれるのって、親しかいないんですよ。だから本当、未だに二人三脚でやっているような意識はありますね。

:家族だからこそ、スッと入ってくる意見でもありますよね。

池江 :本当にそうです。本当のことを言われると、クッと思う時はあるんですけど、でもそれは親だから言えるんだなというのもありますし。自分が親になってみて初めて分かりましたね。だからそういう言葉もありがたく受けています。

:何か、すごく良い関係ですよね。

池江 :父は、親父というより、師匠なんですよね。9割以上が師匠なんです。今、競馬新聞を見ると「池江調教師」って載っていますが、それがもう僕のことなんですよね。これからは「池江」という看板を背負っていかなきゃいけないプレッシャーもあります。名門と言われた厩舎の看板を、二流三流に落としてはダメだという思いがあります。


:身が引き締まりますね。馬も新しいメンバーが増えて、今年は益々お忙しくなりそうですが、その中で注目の馬といったら何ですか?

池江 :バーディバーディという馬ですね。これも父の厩舎からの転厩馬なんです。路線はダートの中距離で、この馬も完成度が高くないんです。だからまだまだ強くなりそうな手応えがあります。

:昨年6月のユニコーンS以来勝ち星からは遠ざかっていますが、ここ2戦はGIでも好走していますしね。

池江 :ええ。前走のフェブラリーSも、一瞬“勝つんじゃないか”というくらい、トランセンドに迫りましたしね。ユニコーンSの頃にはまだ戻り切っていないような感じなんですが、その過程でGIであれだけ走れるんだから、相当強くなるなと思います。

:管理馬の層が一段と厚くなりましたね。先生、前回のインタビューで、夢は凱旋門賞とおっしゃっていましたが、その頃と比べて目標には近づいていますか?

池江 :近づいているのかどうなのか分からないですけれども、1年半前に比べて在籍馬の層も厚くなっていますし、スタッフもそ成長しています。それにやっぱり、トゥザグローリーという馬がいますからね。凱旋門賞に挑戦するのに十分価値のある馬だと思いますし、挑戦したい馬だと思っています。

:大きな夢を抱かせてくれる馬とおっしゃっていましたが、これからどこまで強くなるとお考えですか?

池江 :う〜ん、この世代は最強世代と言われていますよね。世界一になった馬もいますし。その世代のトップになってくれるんじゃないかな、という希望もあります。それはイコール、世界一ですからね。

でも、去年の有馬記念でもう少しというところまで行きましたし、あれからずいぶん力も付けています。さらに成長すれば、追いつき、追い越すことはできるんじゃないかなと思います。

:凱旋門賞も含め、海外競馬にはどんどんチャレンジして行きたいですか?

池江 :そうですね。僕も、ヨーロッパ、アメリカにそれぞれ1年ずついました。当時は日本競馬に対する認知度って低かったんです。でも、今は日本競馬がかなりレベルアップしました。ドバイワールドCを勝つ馬も出てきているわけですし、凱旋門賞だって手が届くくらいになってきているんじゃないかなと思いますよ。

:先生が行く時は、「強豪だ」と思われて行きたいですよね。

池江 :そうですね。それで、向こうの知り合いに「あいつ、本当に帰って来た」って言われたいですね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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