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英ギニー開催展望

  • 2011年04月27日(水) 12時00分
 今週末、英国ニューマーケットで行なわれるギニー開催の展望をお届けしたい。

 4月30日(土曜日)に行われる牡馬の2000ギニー(8F)には、25日(月曜日)に設けられた登録ステージで15頭が出走への意思を示した。だが、ファンの目はほぼ、たった1頭に注がれていると言って過言ではない。

 ブックメーカー各社が、4/9(1.44倍)から4/7(1.57倍)というオッズを掲げて圧倒的1番人気に支持しているのが。フランケル(牡3、父ガリレオ)である。2歳シーズンは4戦し、英国における2歳チャンピオン決定戦G1デューハーストS(7F)を含めて、負け知らずの4連勝。2戦目にドンカスターの条件戦(7F)を制した際には13馬身差、重賞初制覇となったアスコットのG2ロイヤルロッジS(8F)でも10馬身差と、桁違いの能力を示すレースを見せている。

 欧州では昨今、シーズン開幕から間もない2000ギニーや1000ギニーは“ぶっつけ”で臨むのが主流となっているが、フランケルは4月16日にニューバリーで行なわれたG3グリーナムS(7F)に登場。4馬身差で勝利を収め、順調に冬を越した姿をファンに披露した。

 母カインド(その父デインヒル)が現役時代は5F〜7Fの距離で6勝を挙げたスプリンターだったこと、デューハーストSを制した際に前半掛かる仕草を見せたことなど、距離延長への不安を囁かれている一方、8Fの2000ギニーでは「死角が無い」というのが大方の見るところである。

 フランケルとは、オーナーブリーダーであるカリッド・アブドゥーラ殿下のジャドモント・ファームの、アメリカにおける主戦調教師で、09年11月に亡くなったボビー・フランケル師をトリビュートする目的で与えられた馬名だ。組織にとっての大恩人にクラシック制覇を捧げたいジャドモント陣営は、ペースメーカー役としてバリー・ヒルズ厩舎のリルーテッド(牡3、父ストーミーアトランティック)を用意し、フランケルのパフォーマンスをサポートする態勢を整えた。

 最後の3冠馬ニジンスキーが41年前の1970年に2000ギニーを制した際のオッズが、4/7(1.57倍)だったが、まずは、フランケルの人気がこれを越えるかどうか。そして、どんなレース振りでクラシック制覇を果たすか。固唾を飲んで見守りたいと思う。

 6倍前後のオッズで前売り2番人気に推されているのが、G1ナショナルSを含め、3戦3勝という戦績を引っ提げて、愛国から遠征してくるパスフォーク(牡3、父ディストーテッドヒューモア)だ。

 デューハーストSの2着馬で、その後フランスのG1クリテリウムインターナショナル(1600m)を制したロデリックオコナー(牡3、父ガリレオ)。4月14日に本番と同じコ−ス・同じ距離で行なわれた前哨戦のG3クレイヴンS(8F)を制したネイティヴカーン(牡3、父アザムール)。ドンカスターのG1レイシングポストトロフィー(8F)を制しているゴドルフィンのカサメント(牡3、父シャマーダル)らが、2着争いに加わって来る馬たちと言われている。

 2000ギニーの模様は、翌5月1日(日曜日)にJRAの各競馬場やウィンズで放映される他、グリーンチャンネルの競馬中継でも紹介される予定なので、ぜひ御覧いただきたい。

 5月1日(日曜日)に行われる牝馬の1000ギニー(8F)には、25日(月曜日)に設けられた登録ステージで23頭がエントリーを行った。こちらの方は2000ギニーとは一転、10倍以下のオッズに5〜6頭が並ぶ、混戦模様である。

 5倍から5.5倍のオッズで前売り1番人気になっているのが、フランスから遠征してくるムーンライトクラウド(牝3、父インヴィンシブルスピリット)だ。2歳時は、2連勝の後に挑んだG1ジャンルクラガルデル賞(1400m)で牡馬相手に4着と健闘。3歳緒戦となった4月7日のG3アンプルダンス賞(1400m)を快勝して、ここへ臨んで来る。

 わずかの差の2番人気が、ハヴァント(牝3、父ホーリング)。ニューマーケットのG3オーソーシャープS(7F)を3.1/4馬身で制したのを含めて、2戦2勝という成績を残している、マイケル・スタウトの管理馬である。

 ニューマーケット・ジュライコースのG2チェリーヒントンSなど、2重賞を制しているメモリー(牝3、父デインヒルダンサー)。6着に敗れた昨年8月のG1モイグレアスタッドS(7F)以来の出走となるが、4月18日にニューバリー競馬場で行なったレースコース・ギャロップの動きが素晴らしく、ここへ来て人気が上昇している。

 カラのG1モイグレアスタッドS(7F)、ロンシャンのG1マルセルブーサック賞(1600m)と、G1に2勝し、カルティエ賞最優秀2歳牝馬の座に輝いたミスティーフォーミー(牝3、父ガリレオ)。25日の段階でニューマーケットの馬場は Good to Firm と固め。主催者が散水を行っている他、週の後半に雨の予報もあるが、馬場が柔らかくなれば、この馬のチャンスは広がるはずだ。

 4.1/2馬身差で制したニューマーケットのG1チーヴァリーパークS(6F)を含め重賞3勝を挙げて、サラブレッドランキングの欧州2歳牝馬部門で首位に立ったのがフーレイ(牝3、父インヴィンシブルスピリット)だ。6Fまでしか経験がないが、速さ比べになればこの馬の出番だ。

 4月14日にニューマーケットで行なわれた前哨戦G3ネルグウィンS(7F)を制し、25日のエントリーステージで3万ポンド(約420万円)の追加登録料を支払ってエントリーしてきたのが、ベアフットレディー(牝3、父フットステップスインザサンド)だ。ネルグウィンSのレース振りは実に渋太く、混戦に強いタイプであろう。

 馬券的にはどこからでも入れそうな1000ギニー。レースの模様は、5月14日(土曜日)午後1時から放送予定の、NHK−BS「世界の競馬」、5月25日(水曜日)午後9時から放送予定の、グリーンチャンネル「海外競馬ジャーナル」などで紹介される予定だ。

 なお、先週のこのコラムでお知らせした、香港クイーンエリザベス2世Cのグリーンチャンネルにおける中継は、ヴィクトワールピサの出走回避により、取りやめとなりました。悪しからずご了承ください。

▼ 合田直弘氏の最新情報は、合田直弘Official Blog『International Racegoers' Club』でも展開中です。是非、ご覧ください。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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