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浅野靖典さんインタビュー中編

  • 2011年06月08日(水) 12時00分
指名は見た馬の中から! 責任感からそう貫いている浅野靖典さん。浅野さんの馬を見るポイントとは? そして注目の、今年の新種牡馬の仔たちの感触は?

◆大事なのはかっこ良さ

赤見 :POGの指名の仕方は、血統だったり、調教師の話を聞いたり、みなさんそれぞれ違うじゃないですか。そんな中で浅野さんは、牧場に足を運んで実際に見た馬を選ぶということですよね。それだけ思い入れもありそうですね。

浅野 :そこへ行くまでは、10年以上前から一口馬主の会員になっていることがありまして。そこがスタート地点なんですね。牧場に年10回とか行くようになって、いろんな馬を見て、何と言うのですかね、未来が詰まっているわけじゃないですか。

赤見 :きれいな表現ですね。

浅野 :で、だんだんと生産牧場の人達とも親しくなってね。「うちのダービー馬だよ! 見て行け!」みたいな感じになるわけですよ。そこに夢が詰まっているんですよね。見ているのは日高の馬なので厳しいところはあるんですけど、でもそのなかにはPOGに向けて「これは覚えておこう」という馬はいるわけで。そうやって実際にたくさんの馬を見させてもらって、そのなかでいいなと思ったその馬が、結果どうだったのかを確認するという、その仮説立てと検証作業の繰り返しで学んできた感じがあります。

赤見 :なるほど。その中で、見るところはちょっと変わってきますよね?

浅野 :違ってきますね。自分の場合ですが、当歳の競りだと実際のところはわけ分かんないんですけれど、伝わってくる大物感が一番大きい部分。1歳競りの場合は、脚元に不安がないか、飛節の角度に余裕があるかなど、馬体の確かさがメインのポイントになりますよね。

赤見 :さすが、競りの進行役もこなす浅野さん!  POGの指名時期だと、どいうところがポイントですが?

浅野 :現状の動きとか、体が丈夫かどうか、脚の形や骨質はどうかとか、その辺がキーになってきます。具体的には脚があまり細くなくて、歩きに軽さが感じられる馬が高得点。だから、フィーリングなんですよね。そのフィーリングというのは、競り市に参加される皆さんも同じようなことをおっしゃるんですけど、遠くから見ていいなと思った馬をチョイスするという、そんな感じですね。

赤見 :遠くから。

浅野 :うん。それと、以前、ある調教師の方と牧場めぐりをしたことがあって、馬を見せていただいたときに「馬は3歩で分かる」っておっしゃったんです。しばらくしてから、それは金言なのかもしれないなと感じてきましたね。一番重要なのはファーストインプレッションではないのかと。

赤見 :確かに、長いこと見ているとわけが分からなくなりますよね。そういう中で、浅野さんが特に重視しているポイントは何ですか?

浅野 :オーラ。それは、かっこいいかどうかということです。かっこいいということは、関節に無理がない、体型にも無理がないということ。立ち姿がきれいでかっこ良ければ、それはある意味、完成に近付いている確率が高いと僕は思うんですよ。

赤見 :なるほど。逆に腰がゆるかったりすると。

浅野 :立ち姿ができるまで時間がかかりますし、つなぎが立ちぎみだったり、前肢後肢の長さが違っていたりすると、やっぱりキレイには立てないですよね。

赤見 :写真を見て指名する方も多いですが、そういう場合でも?

浅野 :うん。やっぱりかっこいいと思えればいいんじゃないかな。以前、社台レースホースのカタログを見ていて、「これとこれ」って、かっこいいなと思って印をつけた2頭が、ゴールドアリュールとテレグノシスだったんですよ。パーツパーツじゃない、全体がかっこ良かったんです。

赤見 :雰囲気イケメンがいいということですね。入る厩舎は考えますか?

浅野 :厩舎はあまり考えないんですけど、最近、値段が高い馬はとにかく成績を挙げている厩舎にっていうのが強すぎて、バランスを欠いているところがあると思うんですよね。

赤見 :はい。

浅野 :合う合わないが一番大切だと思うんです。例えば、赤本で1位指名のコスモヴァレンチの09(父ディープインパクト)、これは加用正厩舎なんですけど、これがたとえば調教がハードな傾向がある厩舎だったら指名しません。そういうマッチングの考慮はありますね。

赤見 :厩舎の善し悪しじゃなくて、馬と厩舎の相性なんですね。今シーズンですが、新種牡馬ではダイワメジャーがいます。どんな印象ですか?

浅野 :基本的にでかいですね。それが活きる馬と、足かせになる馬がいると思います。気性的には、ダイワメジャーみたいに超ヤンチャっていう仔はあんまりいないですよ。エイシンオースチンの09は赤本には写真も載っていないんですけど、獣医さんにお勧めされて馬房で実際に触らせてもらったりして、なかなかいいところがあると思いましたね。

赤見 :同じく新種牡馬のアドマイヤムーンはどうですか?

浅野 :お腹がコロンとして、アドマイヤムーンに似ている馬が多いなっていう印象ありますね。なかなか良さそうですよ。アドマイヤムーン自身も、札幌2歳Sから活躍しているわけですしね。

赤見 :好印象なんですね。

浅野 :北海道から「レオソレイユの09(馬名レオアクティブ)は取っといた方がいいですよ」という電話がきましたよ。ただ今年は、新種牡馬だからと言って、あまり飛び付く必要性は感じられないですね。

赤見 :去年のディープインパクトのような感じはないですか?

浅野 :うん。とりあえずは近寄らない方がいいような気がします。1年様子を見ても全然遅くないと思いますので。最近の血統は、サラブレッドは全馬良血なんだけど、その中でも良血中の良血というのが出てきているじゃない。

赤見 :はい。

浅野 :誰でも分かる正解がその辺に転がっているというのが、昨今の情勢じゃないですかね。でも、それじゃあつまらないから抵抗しているんだけど、抵抗している割には、赤本で指名した10頭の中にディープインパクトが4頭もいるんですよね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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