スマートフォン版へ

浅野靖典さんインタビュー後編

  • 2011年06月09日(木) 12時00分
お待たせしました! 現場派・浅野靖典さんが今年お勧めする期待の2歳馬。他の人とはちょっと違う指名馬を探している方、必見です!

◆目を閉じると出てくる

赤見 :赤本指名馬10頭中の1位がコスモヴァレンチの09(父ディープインパクト)。どこに惹かれたんですか?

浅野 :姿が良かったんです。雰囲気で「あ、これは大丈夫だな」と。デビューは多分遅いと思います。まだまだ幼児体型ですよ。逆にそこがいいと思うんです。3位指名のシアトルブリッジの09(父マンハッタンカフェ、馬名セトブリッジ)は森秀行厩舎なんですけど、これは当たりだと思います。もう入厩して、ゲート試験に受かって、放牧に出ました。

赤見 :早いですね。

浅野 :ちなみに個人的には、5位のコーレイの09(父ディープインパクト)が牧場取材で一番いいなあと思った馬なんですよね。馬体重が400kgしかないんですけど。産地馬体検査も入れると、去年のマルセリーナみたいに目を閉じると浮かんでくるのが、Manduroの産駒でローズジプシーの09(馬名ジプシーマイラブ)。矢作芳人厩舎に入ります。

赤見 :どんなところが良かったですか?

浅野 :もうこれは全体的な雰囲気。説明しにくいんだけど(笑)。あと、プンティラの09(馬名ハッピーユーゲント)。これはディープインパクト産駒で吉田直弘厩舎ですね。目がかわいかったです。

赤見 :えっ、目がかわいい、のみですか!?

浅野 :はい(笑)。いろんな調教師のインタビューをしましたけど、走る馬に共通するのはね、牝馬は顔がかわいいこと。かわいくない馬っていうのは走らないみたいです。顔は重要ですよ。

赤見 :そうなんですか。牡馬だとどうですか?

浅野 :牡馬もやっぱりハンサムで、それで勇猛果敢な感じがあるタイプがいいんじゃないかなと。でも、自分は牡馬を見抜く力はそんなに無いって自覚しているんですよ。牝馬の方が当たりますね。

赤見 :マルセリーナのように、ですね。他にもお勧めの仔はいますか?

浅野 :個人的に興味がある中で良い馬だなと思ったのは、セシルブルースの09(馬名アイムユアーズ)かな。ファルブラヴの産駒で、多分短距離向きだと思います。モンローブロンドの09(父キングカメハメハ 、馬名ビキニブロンド)も良かった。でもこれは、取り合いになるでしょうね。

赤見 :はい。

浅野 :あと男馬ですが、ディープインパクトのコマーサントの09(馬名ベストディール)も良かったですよ。国枝栄厩舎です。馬が良かったというか、歩きが軽いんですよね。筋肉の収縮力がすごいあるなという印象です。シンボリクリスエスのレースパイロットの09(馬名クロスミッション)も良かったな。ディープインパクトのオイスターチケットの09(馬名サングヒーロー)、これは当たりでしょう。多分当たりだと思います。

赤見 :良い情報をたくさんいただきました! 浅野さんと言ったら、やっぱり生産地と近いというのがありますが、牧場をたくさんご覧になってきて若馬育成に感じることってありますか?

浅野 :さっきの厩舎の話と同じで、馬には牧場との相性があると思います。マイネルだったらマイネルらしい馬が合うと思いますし、逆にその馬が牧場の特徴や育成方針に合わなかったから素質を開花させられないんじゃないかと思います。経験値の違いもありますし。

赤見 :はい。

浅野 :例えば、サンデーサイレンス産駒の成功例を知らない牧場が、サンデーサイレンス産駒をいきなり活躍させるのは非常に難しいと思うんですよ。同じような話で、JRAブリーズアップセールに出てくる馬には、誰がどう見ても超良血、みたいな馬はそんなに多くはないんですよね。

赤見 :そうなんですか。

浅野 :うん。でも、そういうきらびやかな血統の馬が、JRAの育成スタイルにマッチするかというと微妙な気がしますね。というのは、JRAの育成場はガチガチに鍛えるという感じではないですけど、でも4月下旬までにはどんな血統でもどんな成長曲線をもつ馬でも、ある程度仕上がっていないといけない。そこが難しいところでもあるんですけれどもね……。そんな意味も含めてすごいなというのは、ヤマニンの錦岡牧場ですね。

赤見 :と言いますのは?

浅野 :極端に言うと、どんな血統の馬でも結果が出るという。個人的に考えるにその秘密は、牧場の方がいい意味で適当で、それがいい湯加減になっているんじゃないのかなあと。もちろんいろいろ管理して人が育てているんだけれど、それが馬にとって悪い影響になっていないというのかなあ。だって、馬の方が人間より遥かに感性は上だし、成長力はあるし、無駄なことを考えない。邪念がないですよね。それをそのままいかせる勇気があるのかどうか。

赤見 :人が邪魔しないというか。

浅野 :そう。例えば、高い値段の馬を預かったとき、育成をいっぱいやりたくなるのが人情じゃないですか。でも、それをやらない勇気があるかということが大きなポイントだと思うんです。馬の育成には心の余裕が重要という気がしますね。

赤見 :そこを抑えられるか。なかなか難しいところですね。

浅野 :うん。僕がもしも金持ちだったらやってみたいのは、体がゆるゆるだけど素質はありそうだなという馬を競り市で安く買って、2年くらい自由に放牧させておいて4歳の秋にデビューさせるという作戦。まあ、POG的な話からは離れますけど、やってみたいなと思うジャンルですね。

赤見 :でも、良いかもしれないですね。海外だと心の問題で1年間休ませたりするんですよね。そういう余裕のある環境で育った馬、見てみたいです。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング