中山コースの距離2000mの難しさがフルに前面に出たような天皇賞だった。
レース全体の流れは、前半59.3−後半59.2秒。1分58秒5。この春にノーリーズンが抜け出しタイガーカフェが2着、タニノギムレットが3着の皐月賞と全く同じだった。
ゴーステディの逃げは前半58秒5前後も可能と思えたが、この馬、成績通り右回りではまったくダメ。1角を回るときから手前の変え方がスムーズではなかった。力を出せない。
このスローにも近い逃げに、先行タイプの人気馬テイエムオーシャン以下は向正面で7〜8馬身差。60秒台後半の1000m通過になる。このときもう、バランスが崩れている。1分58秒0前後の勝ち時計が予測された中、前半の1000mを60秒5前後で通過しては、後半を最低でも58秒でまとめなければならない。
それは中山ではムリで、3角手前からテイエムオーシャン、エイシンプレストンなどの追い上げが始まったが、このロングスパートは危険。みんなこれを目標にする。悪いことにもっと後方から爆発力を生かすと考えていた期待のサンライズペガサスもまくって出た。
後半11.7−12.2−12.1−11.7−11.5秒のラップは、数字の上ではふつうのオープン馬なら楽にこなせそうだが、これが中山の難しさで、一気にロングスパートが決まるようでいて、3角手前から自身が11秒台のラップを連続して踏むと、最後の坂を含めた2ハロン(11.7−11.5秒)で、あと一歩末が鈍る。これがサンライズペガサスだった。寸前であと一歩伸びなかった。
シンボリクリスエスはほぼ同じような位置でスパートしたが、ここがベテラン岡部騎手の中山2000mを知り尽くした強み。ひと呼吸かもう少し、インで待った。動いたサンライズペガサスなどを見ている。また、もう2000mの時計勝負には対応できないだろうと考えていたナリタトップロードはその通りで、追い通しでもついていけなかった。それが結果として、最後まで伸び切る底力となって生きたのだろう。
きわめて興味深い面白い天皇賞だった。と同時に、スパートのタイミングや、コースどり、さらにはどこで楽をするかなど、小さな要素が大きく明暗を分ける2000mだった。
人気のテイエムオーシャンは一番苦しい位置におかれた。また、ちょっとかわいそうだが、エアグルーヴ級と比較しては、それはあまりに酷というものだろう。エイシンプレストンと、伏兵ブレイクタイムは、不思議なもので、今回は体が小さくみえた。それなりの形を作った武豊騎手エアシャカールと、ペリエ騎手のトーホウシデンはさすがで、きちっと力を出している。