笹田和秀
1956年9月29日生まれ、広島県出身。名門・伊藤雄二厩舎の調教助手として活躍。ダイイチルビー、エアグルーヴなど、数々の名牝を手掛けたことで有名。09年に栗東で厩舎開業。11年、レディアルバローザで中山牝馬Sを、エリンコートでオークスを制し、開業3年目に大きく飛躍した。
◆「即答!10の質問」
皆様の質問にお答え!
Q1.オークス優勝おめでとうございます。エリンコートはデュランダル産駒なので2400mはもたないと思っていましたが…固定観念はダメですね。3歳だと血統より能力次第というのがあるんでしょうか?
そうですね。桜花賞で好走できるくらいの馬は、オークスまでは能力でカバーできるという、そういうのがあると思いますよ。1600mから2400mって普通なら考えられないけど、みんなクリアしていくのは、そこで完成されているか、能力があるからでしょうね。
あとは3歳馬同士だから、その時点での成長の違いがありますよね。その差でクリアできるのもあると思います。
Q2.エリンコートはデビューが1200mで、今回のオークスは2400mと倍の距離。すごいですね。ズバリ適距離はどのあたりですか?
1600〜2000mくらいが守備範囲だと思うんですけど。その前に1800mで勝って、2000mでも勝って、そこで馬が自分で学習していってくれたというか。「この距離ならこれくらい走ればいい」って、そういう学習をしてくれたから、こなしてくれたんだと思います。
Q3.エリンバードの娘がGI勝利、、、なんだか感慨深いものがあります。先生もそういう思いはありましたか?
実は、正直僕は、エリンバードのことはそんなに知らないんです(苦笑)。ただ、(武)豊が乗っていたことは知っていて、豊も「お母さんに乗っていましたよ」って応援してくれていました。それが励みになって、良い結果が出て良かったなと思っています。
Q4.GIを勝った自分へのご褒美は? スタッフやご家族へのご褒美は?
自分へのご褒美はありません。スタッフには、ちょうど今日、スタッフの家族も含めて祝勝会をします。自分の家族には、女性陣3名に「服でもなんでも好きな物を買って下さい」と(笑)。自分はその分、記念品のジャンバーとかQUOカードを作ります。
Q5.笹田師と言えば、伊藤雄師の調教助手さんであったことは有名です。牝馬の長い距離が得意だった厩舎だけに、自分がGIを勝つときもそうなのでは、という思いはありましたか?
長い距離というのではなくて、牝馬との相性というのはありますね。牝馬ならどんな馬でも、何か通じ合えるところがあるんです。だから牝馬はやりやすいなと思っていました。
ただ、自分の目標としては、伊藤雄二先生が勝てていない牡馬クラシックの菊花賞レース、これを目標にしたかったので、どちらかと言うと長い距離の馬をそろえなきゃという思いもあります。
Q6.今の“牝馬強し”の流れを作ったのはエアグルーヴではないかと思います。手掛けた笹田先生に聞いてみたいのですが、エアグルーヴとの思い出を教えてください。
入厩初日から僕が担当して調教をさせてもらっていたんですけど、ガラスみたいな馬でしたね。壊れやすいという印象で。
華奢で、か弱くて、可愛い女の子。常に懐に入れて“よしよし”してあげたいなっていう馬だったのに、乗ってみると、もう全然。牡馬牝馬合わせても、今まで調教に乗った馬で一番強いなという印象を与えてくれて、結果もずっと出してくれました。
※エアグルーヴとの秘話は明日から公開のインタビュー本文で!
Q7.エアグルーヴの子供たちはやっぱり気にかけていますか? 似ているなと思うところはありますか?
初年度の仔からずっと気にかけていて、毎年エアグルーヴが子どもを産む時には、牧場へ行って母子を見て、「ギャルちゃん」(当時の呼び名)って鼻をなでて帰るんです。忘れないんですね。「ギャルちゃん」って言ったら、振り向いてくれますよ。
あの競馬にいって良い気性、その激しさが出るところは、子どもに引き継いでいるなと思います。
Q8.厩舎を開業する時にこだわったことベスト3を教えてください。
まずは、オリジナルで調教用の鞍を作りました。ジョッキーが競馬で使っているような形の鞍です。2つ目は、馬よりも乗り手を育てようとしたこと。もう1つは、全員が馬を主体に考えるようにすること。馬は絶対に怒らないように注意しています。
Q9.オークス週のWIN5で配当が1億4000万円超え!!! もし1億4000万円あったら、厩舎経営のために何に投資しますか?
あはは(笑)。そうですね、まずスタッフにボーナスを出してから、それから馬に良い環境作りをします。ミストをつけたり下にゴムを敷いたり、そういう馬に良いものを厩舎に設備投資します。
Q10.期待の2歳馬がいたら教えてください!
入厩する2歳馬は24頭くらいいるんですけど、期待の2歳馬は…いっぱいいますよね。まだデビューしていないから、みんな期待できるじゃないですか(笑)。
特に期待しているのは、ダイワメジャーとアルバローズの仔。バラ一族の牝馬なんです。そういう血統的な背景もありますし、期待が持てるんじゃないかなと思っています。