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笹田和秀調教師インタビュー前編

  • 2011年06月14日(火) 12時00分
エリンコートでオークスを勝利した笹田和秀調教師を直撃。助手時代にはエアグルーヴを手掛けるなど、牝馬育成に定評のある笹田師。エアグルーヴとの秘話から牝馬育成術まで、たっぷりお届けします!

◆牝馬だからこそ雨を

:エリンコートでのオークス優勝おめでとうございます。伊藤雄二厩舎で助手をされていた時に手がけたエアグルーヴも勝ったオークス。調教師として手にされて、改めてどんなお気持ちですか?

笹田 :いろんな方に言葉をかけていただいたり、お祝いをいただいたりして、「ああ、オークスを勝ったんだな」という実感が沸いてきましたね。それと「こんなに早く勝てたな」という思いもあります。

:開業3年目での勝利ですから、スタッフさんにとっても大きな経験になりますよね。

笹田 :そうそう。良い経験になるでしょうし、自信にもなって、プライドを持って仕事ができるようになると思います。士気は上がっていると思いますね。

:先生の厩舎は若いスタッフさんが多いですもんね。

笹田 :そう、皆はね。僕はもう……。

:いやいや(笑)、まだまだこれからじゃないですか。

笹田 :定年まではあと15年ありますけど、でも、40歳の調教師だったらあと30年、僕の倍もあります。僕は調教師になるのが遅かったので枯れるのが早いから、早いうちに花を咲かせておかないと。凝縮して、濃くいきます(笑)。

:あはは(笑)。でも、今年はその通り、内容が濃いですね。4月の中山牝馬Sで重賞制覇、その1か月後にオークスでGI制覇ですから。そのオークス(11/5/22、東京芝2400m)からお聞きしたいのですが、7番人気での勝利となりましたけど、自信はありましたか?

笹田 :はい! 自信満々ではなかったですけど、うちの馬は前走の忘れな草賞(11/4/10、阪神芝)で2000mまで克服していたので、プラス400mが未知の距離でした。でも桜花賞に出走した組は、1600mを走った後でのプラス800m。そこに付け入る隙はあるんじゃないかなと。

:そう考えると距離の差は大きいですね。レース前の状態はいかがでしたか?

笹田 :順調でしたよ。この馬って、一戦一戦でものすごく学習してくれて、こっちが思っている以上に成長してくれているので、忘れな草賞の頃よりもっといいんじゃないかなという感じでした。

:後藤浩輝ジョッキーとは、その忘れな草賞でもコンビを組んでいるので、その点も安心ですしね。

笹田 :そうです。「ちょっと我の強いところがあるけど、我慢してくれるし、並んだら抜かせない勝負根性を持っている」って言ってくれていましたよ。

:先生はどんなところが魅力だと考えていらっしゃいましたか?

笹田 :まずスタートセンスが良いですよね。だから、自分の取りたいポジションに入れます。それと、切れる脚はないけども、最後までジリジリでも一生懸命がんばって走るのがこの馬の特徴じゃないかなと思っていました。

:自信を持たれて臨んだレースですが、当日はあいにくの天気で、雨も降っていました。そこは気にされましたか?

笹田 :はい。表彰式の時に濡れるのが嫌だなと(笑)。それは冗談ですけど、デリケートな牝馬ですからね。「私、雨嫌って」って思わなきゃいいなって。だって、せっかくお化粧しているのに雨に濡れたら嫌でしょ?

:嫌です(笑)。

笹田 :でしょう? 男馬だったらそこまで考えないですけど、牝馬だからそういう気持ちで見てあげるんです。

:牝馬だからこその気遣いですね。その思いに応えてくれて、見事に1着でゴール。一戦一戦で成長してきたということですが、この結果でまた成長を感じましたか?

笹田 :そうですね。2400mを克服してくれて、すごく成長していると思いました。それまで1800m、2000mとクリアしてきて、自分がどう走ったらいいか理解していたんでしょうね。ただやっぱり、雨は気にしていたんだと思います。だから、初めて直線でフラフラしてしまったりして。雨と2400mで体力が少し限界にきていたのもあったんでしょうけどね。

:そうすると、レースの後は疲れも出たんですか?

笹田 :やっぱりレース後2日くらいは、ご飯をあまり食べなかったです。一生懸命張っていた気も緩んだんでしょうしね。でも、今は牧場に行っていて、もう回復していますよ。

:それは安心しました。振り返ると、デビューが7月の函館(10/7/25、函館芝1200m、3着)でしたが、厩舎に来た頃はどんな仔だったんですか?

笹田 :厩舎に来た頃は、あまり良い筋肉がなくて、でも骨格だけはしっかりしていて。気性的にきついものを持っていたので、一生懸命走ろうとするんだけど、まだ体がないから、体力を無駄に使わせないように注意をしていました。だから、使っては短期放牧に出して、気分転換をさせていたんです。

:3戦目の札幌(10/9/25、札幌芝1500m)が初勝利でしたが、ここは距離が少し伸びてでしたね。

笹田 :そうですね。1200m、1200mでジリジリ3着3着だったので、距離を延ばしてみたら、案の定きっちり差し切って。でもその後が4着、6着、4着となかなか勝てませんでした。その頃、ちょっと馬が力み過ぎていたんですよね。

:走りたい気持ちが前に出てしまって?

笹田 :そうだと思います。そこで少し休養を入れたんですが、その頃から落ち着きが出てきました。ご飯もしっかり食べるようになったんです。

:それまでは食が細かったんですか?

笹田 :細いわけではなかったんですが、朝の飼い葉を残したり、完食するまでの時間も長かったんです。それが、その頃からは早く食べるようになって、ほとんど食べきれるようになったんですよ。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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