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高田建吾持ち乗り助手インタビュー中編

  • 2011年06月22日(水) 12時00分
良血馬ぞろいの角居厩舎の中にいても、期待をされてきた「エアグルーヴの仔」ルーラーシップ。その期待通りに順調なデビューを飾ります。しかしその先に、数々の困難が…。

◆ヴィクトワールピサに勝つ

:ルーラーシップは当初から期待が高かったということですが、新馬戦を勝ち、2戦目の若駒S(10/1/23、京都芝2000m)でも2着と順調な出だし、だったのですが、その後に熱発やフレグモーネでレースを変更したりと、ちょっと不安も続きました。

高田 :そうですね。今考えれば、おそらくその頃は体質が弱かったんだと思います。

:フレグモーネは、細菌による炎症ですよね?

高田 :そうです。脚の傷口から細菌が入ることによって化膿しちゃうんです。その細菌感染で白血球の数値が上がってしまって、体温もボーンっと上がっちゃうんですよね。

:熱発にもつながっちゃうんですね。

高田 :熱発というのは、馬にとっては苦しいことですからね。

:この頃は、馬にとって辛い時期だったんですね。しかもレースでも、3戦目のアルメリア賞(10/3/7、阪神芝1800m、1着)では、直線で馬体をぶつけられてバランスを崩しながらのレースになり、その次の毎日杯(10/3/27、阪神芝1800m、5着)では、すぐ横にいた馬が故障してしまったり…。

高田 :そうですよね。それでも、根性のあるところをいつも見せてくれていましたからね。「強いな」と思いました。メンタル面の強さ、そこがこの馬の一番の強さじゃないでしょうかね。

:メンタル面の強さ。

高田 :はい。どんな状況でも、最後まで走り切ってくれるというのは、やっぱりメンタルが強くないとできないと思うんですよね。それを持っている馬だと思います。その辺はやっぱり、血なんでしょうね。

:なるほど。その精神力の強さで苦しさも跳ねのけて、皐月賞は出られなかったですが、プリンシパルS(10/5/8、東京芝2000m、1着)でダービーの出走権をきっちり獲ってくれましたもんね。

高田 :はい。

:そのダービー(10/5/30、東京芝2400m、5着)、角居厩舎としてはヴィクトワールピサとの2頭出しでした。皐月賞を勝っていたヴィクトワールピサが1番人気でしたよね。

高田 :そうですね。ルーラーシップは4番人気。思いのほか、評価が低いなというふうに思ったんですけどね。

:もっと評価されてもいいのにと?

高田 :ええ。具合も良かったですし、左回りの東京は割と合うかなとも思って期待をしていたんです。それに、実は、ヴィクトワールピサを負かせるんじゃないかなという感じもあったにはあったんですよね。それくらい期待が高かったんです。

:そうだったんですね。ダービー後は半年間休養して、休み明けの鳴尾記念(10/12/4、阪神芝1800m、1着)で初重賞制覇。

高田 :はい。この時は爪が悪くて、それを治すのに少し時間をかけたんです。それでちょっと長い休みにはなってしまったんですが、休み明けで重賞を勝ってくれましたからね。

:そして、グランプリレースの有馬記念(10/12/26、中山芝2500m、6着)へと向かいました。この時ファンの方に向けてに角居先生が「ルーラーシップに投票してください」とおっしゃっていましたが?

高田 :確かルーラーシップは、賞金がギリギリだったんですよね。調教師としては、それだけルーラーシップも有馬記念に出走させたかったんですよね。それも期待の表れだと思います。

:先生としても、ずっとルーラーシップには期待を寄せていらっしゃったんですね。3歳馬ながら古馬と戦って、6着という結果でした。

高田 :有馬記念の時もそんなに悪い気配ではなかったんですけどね。ただ、中山が合わないのかなという気はしていたんです。

:と言いますと?

高田 :中山はトリッキーなコースと言われるじゃないですか。そういうコースよりは広いコースの方が、この馬の走りを活かせるのかなという印象だったんです。

:そういう心配はあったんですね。ここで勝ったのがヴィクトワールピサで、ここでもまたライバル対決があったわけですね。さて、現在は、次走の宝塚記念に向けて厩舎で調整中ということですが、調教で何か重点的に調整されていることはありますか?

高田 :特にはないですね。いつも通りです。これまでのやり方を貫くと言いますか、良い状態を維持しているという感じです。

:前走の金鯱賞の時は、大人しくて物足りなさも感じたということですが、今回の雰囲気はいかがですか?

高田 :金鯱賞を使ってから、ちょっと前向きさが出てきたかなという手応えがあります。1回叩いたことで調子も上がっているので、次のGIも良い状態で臨めると思います。

:私たちはあの金鯱賞を見せられていますから、宝塚記念は相当期待を持ってしまうのですが…期待していいですか?

高田 :いいと思います。ぜひとも結果を出して欲しいですね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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