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田中剛調教師「即答!10の質問」

  • 2011年06月27日(月) 12時00分
東京ジャンプSをマジェスティバイオで勝利。騎手時代「障害の田中」として活躍された田中剛調教師が、厩舎初重賞のタイトルを障害レースで飾りました。縁深いオーナーの馬で勝てた喜びと、障害レースの奥深さに迫ります。



田中剛
1961年2月13日生まれ、東京都出身。79年に美浦・柄崎義信厩舎から騎手デビュー。91年には優秀障害騎手賞を受賞するなど、「障害の田中」として活躍。中山大障害など多くの障害タイトルを手にした。09年に騎手を引退し、10年10月に美浦で厩舎開業。翌11年の6月、マジェスティバイオで東京ジャンプSを制し、厩舎初重賞を障害タイトルで飾った。





◆「即答!10の質問」
ファンの皆様の質問にお答え!

Q1.マジェスティバイオでの重賞制覇おめでとうございます。障害の名手であった田中剛先生の厩舎重賞勝ちは、やっぱり障害競走ですね。そんな予感はありましたか?

 ありがとうございます。予感と言いますか、今回はまさか勝てるとは思っていなかったですので。

 去年の10月末に開業してから、1勝を挙げるまでにかなり時間がかかりました。そういう中でなんとか障害馬も出来てきて、マジェスティがひとつ勝ってくれて。1勝馬ですけど「オープン馬が出来たな」と。

 今回の重賞は、1勝馬なので除外の対象になる可能性があったんですけど、そこで運良く入ってくれて、勝ってくれて。「こういう運命だったのかな」とは、後から感じましたね。

Q2.平地のレースに比べて障害レースは全身を使うものだと思います。レース後は体のどの箇所を集中してケアするのですか?

 背中の背最長筋と股関節周りの筋肉ですね。あと半腱半膜張筋というお尻の最後方の筋肉、そこが張っているとどうしても馬が飛べなくなっちゃうんですね。そこを見ています。

Q3.障害レースに初めて挑戦させる時、どれくらいの期間練習するものですか?

 トレセンで1から調教していく場合には、試験に受かるまでに早い馬なら1か月、長い馬で2か月です。2か月くらい経ってあまり進展が見られない場合には、ちょっと考えますね。全部が障害馬になれるわけではないんです。低い障害は上手く飛べていても、高くなってきたらスピードも要求されてダメっていう馬もいますね。

Q4.障害馬の調教ってどうやって行っているのですか?

 初めは直径15cmくらいの丸太を飛ばします。それを2本使って×(ばってん)にして飛ばしたり、2本を=(平行)にして飛ばしたり、その平行の高さをだんだん上げていったりします。

 ある程度の高さになってくると、今度はトレセンの北馬場に80cmくらいの小さな固定障害がありますので、そこに移行していきます。

 トレセンで飛ばすのは、週に2回くらいにしていますね。週3回だと馬がかわいそうなので、追い切りを含めて週2回くらいの障害飛越としていくのがベストかなと思っています。

Q5.障害が得意な血統を教えてください。

 オペラハウスなんかいいんじゃないですかね。中間のスピードを長く使えるような馬がいいと思います。

Q6.障害レースは、より人の操作が重要になると思いますが、障害馬は素直な馬が多いんでしょうか?

 そうですね。人と馬との約束事が一番重要になってきますし、人の言うことを聞かないと馬も障害を飛んでくれないので。馬が従ってくれないと、仕事がもうひとつ増えますね(笑)。

Q7.障害馬に牝馬って少ないように思いますが、それはなぜですか?

 いや、そんなことはないと思いますよ。重賞を勝った馬もいますしね。それは、馬体とかセンスですよね。牝馬でも大柄でスタミナがある馬だと合うと思います。

Q8.日本人として初めてグランドナショナルに騎乗された田中剛調教師。海外では、障害レースはとても人気が高いと聞きますが、実際に行かれてどう感じましたか?

 グランドナショナルと、その前にオーストラリアのレースに日本代表で選ばれて行ったんですけど、“百聞は一見にしかず”ですね。「まだまだ日本の騎手は甘いな」と思って帰って来ました。

 全然違うんですよ。馬場は、日本の芝の不良馬場レベルじゃないんですよね。ボコボコで、球節くらいまで脚が埋まっちゃいますし、障害自体も大きいですしね。

 グランドナショナルでは馬がひっくり返ってしまったので、スタートを切って1分も乗っていなかったと思うんですけど、でも、障害を飛んだ時は「すごく高く上がるな」と思いました。日本のようなハードル的な飛びじゃなくて、乗馬に似たような飛びでしたね。

 また、馬も日本の馬みたいに簡単に動いてくれないんです。オーストラリアでもそうでしたが、追っつけっぱなしのレースです。イギリスやフランスのジョッキーは、体を起こして脚を使って追っていました。「ああやって追わなきゃ走らないんだな」って感じましたね。

Q9.障害レースはどうしても落馬が多いので、空馬が邪魔になることがあると思います。どうやって対処するのですか?

 空馬って大概外に逃げて行くんですけど、走っていて空馬が外から来たらステッキで追い払ったりしますね。あとは、わざとコーナーで膨らませて外に出すようにしたり、内から来られたら挟んで入れないようにするとか、そういうことをします。

Q10.障害レースでも馬券を当てたいなと思うのですが、いかんせん詳しくないので予想をすることから難しいです。障害レースを読み解くこつを教えてください。

 そうですよね。やっぱり、いっぱい勝っているジョッキーを買っておくのが間違いないと思います。障害は平地よりジョッキーの技量が大きいです。

 例えば府中でしたら13回くらい飛ぶんですけど、1回1回怖がっている騎手も中にはいると思うんです。1回1回引っ張っていれば、平地では1回1回挟まっているようなものなので。

 経験豊富な方で長く続けている人はやっぱり上手いですよね。熊沢重文さんや西谷誠君、関東なら浜野谷憲尚とか横山義行が上手いと思います。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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