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イコピコを偲ぶ

  • 2011年06月30日(木) 18時00分
 競馬サークルでは馬頭観音を崇ぶ慣わしがあります。中でも日本で一番大きな馬頭観音があるといわれる馬頭観音妙光院(神戸)を信仰する方はひじょうに多く、その御札は厩舎を問わずあちこちの馬房に飾ってあります。馬たちの無事を祈るのはもちろん、不慮の事故でなくなった馬たちの弔いのためにもこちらで皆さん手を合わせます。

 今週、西園厩舎の桜井助手がその馬頭観音の前で手を合わせたそうです。中山競馬の夏至ステークス、レース中の怪我で亡くなったイコピコのために。安楽死処分…。どれだけ長く競馬に接していても、こういう事故ばかりは慣れませんね。ひじょうに残念です。

馬頭観音妙光院

 イコピコは西園厩舎独自の目立つ水色地に赤い星のメンコ、ハワイ語で「頂上に」という意味のかわいらしい響きの名前。すごくファンの多い馬でした。競走馬はどの馬も一生懸命走るものですが、特にイコピコは普通の馬なら少々つらい仕草を見せそうな状況でもそんな素振りは一切見せずに調教も走ってしまうし、常に元気良く前へ前へと進もうとするところがありました。今回もそんな健気で強気な気性ゆえに一生懸命走り過ぎたのかもしれません。

イコピコ

 レース直前、ゲートまでイコピコを連れていった持ち乗りの桜井助手は「頑張ってこいよ」と一声かけてイコピコを枠場へ入れたといいます。

「競馬ですから、そう声をかけるのは当然なんですが結果がこうなってしまうと…」

 とやりきれない思いを口にする姿には心が締め付けられます。

 ある競馬ファンの方から「脱臼くらいで殺してしまうのはかわいそう」というご意見をいただきました。しかし、競走馬は人間がつくりあげた特殊な動物。自分で寝起きができなくなったら、もう生きてはいけません。とくに体を支える4本の脚のバランスが崩れたら蹄底が炎症をおこして"蹄葉炎"になってしまう。安楽死は仕方のない処置でした。ご理解いただければ幸いです。

 さて、2歳馬の話を。松田博厩舎といえば牝馬の活躍が光りますが、やはり今度の2歳世代も牝馬が主役!? と期待しています。POGで大人気のジョワドヴィーヴルもストレートラブの入厩はまだ先の様子。ストレートラブは「いま体を増やしているところ」(松田博師)とのこと。ジョワドヴィーヴルも5月初旬は422キロだった体が6月中旬で445キロと着々と体重を増やしています。いずれもデビューは秋以降だとわかっていても、ついつい現状を聞いてしまいます。期待するな、というのが無理な注文ですよね。

 入厩中の牝馬ではダイシンキャンディ(父アグネスタキオン×母フレンドレイ)に注目しています。「これは走る」と松田師も公言している1頭。ただし、両前脚がちょっと内股気味なのが気になりますが、今のところ特に問題はなさそうです。「馬体重は430キロ」(大當助手)ですが、そんな軽いようには見えず、ひとまわり大きな印象すら与えます。

ダイシンキャンディ

「スタミナタイプでフットワークが大きくてきれい。中距離くらいがいいと思うよ」(大當助手)。

 現在はゲート練習の真っ最中。来週あたり「合格!」の朗報が飛び込むといいですね。

デジタルレシピ研究家。パソコン教師→競馬評論家に転身→IT業界にも復帰。競馬予想は卒業したが、現在も栗東トレセンでニュースやコラム中心の取材を続けている。“ねぇさん”と呼ばれる世話焼きが高じ、AFPを取得しお金の相談も受ける毎日。公式ブログ「ねぇブロ」(http://ameblo.jp/takako-hanaoka/)

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