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戸崎圭太騎手インタビュー前編

  • 2011年07月05日(火) 12時00分
春のGIシーズンでひと際輝いた戸崎圭太騎手。内田博幸騎手が中央に移籍して以来、地方競馬をけん引し続けています。その地方の雄がついに、安田記念で悲願の中央GI制覇を成し遂げました。

◆勝者だけが知る快感

赤見 :リアルインパクトでの安田記念(11/6/5、東京芝1600m)優勝、おめでとうございます。

戸崎 :ありがとうございます。

赤見 :戸崎騎手がついに、中央のGI勝利ですね。リアルインパクトはそれまで内田博幸騎手が乗っていて、今回はテン乗りでしたが、結構早い段階から騎乗依頼があったそうですね?

戸崎 :そうですね。レースの3週間くらい前でね。あれだけの馬ですし、地方の騎手で乗せてもらえるというのはすごくありがたくて、うれしかったです。

赤見 :でも、中央での騎乗は増えましたよね。特に昨年は、天皇賞・春、オークス、ダービーにも騎乗されて。そういう経験がこの安田記念につながったと思いますが、これだけ乗っていたら、もう緊張することはないですか?

戸崎 :いやいや、めちゃめちゃありますよ。もう、その日が始まった時から緊張しています。なんとか落ち着かせようと思うんですけど、何か慌ただしい自分がいます。

赤見 :そうなると、どうなるんですか?

戸崎 :よくしゃべったり、よく動いたりします。それでも、クールを装うんですけどね(笑)。でも、返し馬の雰囲気ってすごくいいですよね。返し馬は大好きです。

赤見 :返し馬までくると、もう落ち着きますか?

戸崎 :そうですね。返し馬になると、やっぱり馬の感じをつかみたいというのもありますので、落ち着いて乗っています。

赤見 :今回のリアルインパクトに関して、事前に持っていたイメージと実際に跨った印象というのはどうでしたか?

戸崎 :それは一緒だったかなという感じがしますけどね。バネがあって、フットワークが柔らかいという。調子の良さはすごく感じたので、あとは一生懸命さと言うか、ハミのかかり具合だけは確かめたいなと思ったんです。その辺もすごく雰囲気が良くて、返し馬から人馬一体になれたかなという感じですね。

赤見 :“人馬一体”、かっこいいです!

戸崎 :まあ、リアルインパクトにも聞いてみないと、ですけどね(笑)。

赤見 :あはは(笑)。戦う相手のことも調べると思うんですが、どうやって研究されたんですか?

戸崎 :ええと、レースのビデオを見たりですね。

赤見 :中央競馬は毎週見ていらっしゃるんですか?

戸崎 :毎週見ています。だから、どんな馬かというのは大体頭に入っていて。特にGIに出て来る馬は、いつも上のクラスで戦っていますから、余計にそうですね。

赤見 :特に意識していた馬はいましたか?

戸崎 :アパパネですかね、やっぱり。でも、レース行ってしまえば他の馬というよりも、それこそ本当に、自分との戦いだと思っていましたので。

赤見 :まさに「自分に克った」んですね! いざレースですけれども、ゲートが切られるまでどんなお気持ちでした?

戸崎 :ドキドキでした。「スタートは気をつけてほしい」と言われていたんです。実際、やっぱりゲートではジッとしていなくて…。馬に「お願いします」って頼みながら、ドキドキしていました。

赤見 :スタートして、大方の予想通りシルポートがハナに行って、その後にジョーカプチーノ、リアルインパクトは3番手につけました。これまでより前目での競馬でしたが、ポジションは思った通りでしたか?

戸崎 :そうですね。斤量が4kg軽いというのもあったので、思い切ったレースをしたいなとは思っていました。

赤見 :道中はリズム良く走れましたか?

戸崎 :それは、はい。やっぱり、人馬一体でしたので! 直線を向いた時も手応えは十分で、「前は捕えられるな」って思ったんです。あとは、後ろからの馬を意識しながら、追い出しました。

赤見 :そして、最後に待ち受ける府中の長い直線。

戸崎 :長かったですね。最後は後ろから足音が聞こえてきました。だけど、「がんばってくれるだろう」という手応えではありましたので。

赤見 :ゴール直前、同厩舎のストロングリターンが迫ってきていたのは分かりました?

戸崎 :いや、何が来ているかは分からなかったです。もう必死で追いましたね。

赤見 :そうだったんですね。あそこは本当にすごかったです。ストロングリターンの石橋脩騎手は、あの後すごく落ち込んでいました。クビ差ですが、その差は大きいですもんね。その接戦に勝って、1着でゴールした瞬間というのはいかがでしたか?

戸崎 :「勝った」とは思ったんですけど、我を忘れたと言いますか。「あれ? 本当に勝ったのかな?」と思って、周りの人みんなに聞いて。

赤見 :「本当に勝ったの?」って?

戸崎 :はい。あと、ウイニングランはどうしたらいいのかということも、みんなに聞きました。ただ、興奮していて、誰に聞いたのかも覚えていないくらいですけど。

赤見 :GIのウイニングラン、気持ちいいでしょうね。

戸崎 :最高でしたね。スタンドに向かって行く時の気持ち良さ。あれは幸せを感じました。今までにない幸せな気持ちでしたね。

赤見 :そうですよね。その後のインタビューは落ち着いていらっしゃいましたね。すごく良い事をおっしゃっていたなと思いました。

戸崎 :良い事、言えていましたか? どんな事をしゃべったか覚えていないんですけど、多分その時は素でしたから。自分の良さが出たのかなという(笑)。

赤見 :あ、なるほど(笑)。GIを勝って、自分自身で何か変わったことはありますか?

戸崎 : GIを勝つということはいろんな人の力があってこそなので、改めていろんな人に感謝したいなと思いましたね。やっぱりGIは、自分1人では獲れないものです。そこを改めて実感しました。

赤見 :そして、その歓喜の安田記念から3日後、今度は牝馬のクラーベセクレタで東京ダービー(11/6/8、大井ダ2000m)を勝利。「俺きているな!」と思ったり!?

戸崎 :いや……(笑)。魔物が棲んでいるんです、東京ダービーって。

赤見 :魔物!? あ、でも、そうかもしれないです。今年は、クラーベセクレタが20年ぶりの牝馬ダービー馬になりましたし、その一方で、南関の名手・的場文男騎手が、2着はたくさんあるものの未だ勝てていなかったり。何かあるんですね。

戸崎 :そうですね。本当にそれは。東京ダービーというのは、何かが起きるんです。


■次週予告
戸崎圭太騎手独占インタビュー、後半は7/11(月)から2日間にわたってお届けします。

13(水)に迫ったジャパンDダービーへの意気込みから、内田博幸騎手との涙のエピソード、そして、気になる中央移籍への思いまで、内容盛りだくさん。お見逃しなく!!

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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