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戸崎圭太騎手インタビュー後編

  • 2011年07月12日(火) 12時00分
8日に31歳を迎えた戸崎圭太騎手。若くして地方競馬を背負って立つほどになり、いよいよ注目されるのが中央への移籍。その思いはどれほどなのか。直撃します!

◆しっかり考えなきゃ

赤見 :7月8日で31歳ということで、まだお若いですね。その若さで既に地方競馬のトップとなられていますが、この状況は想像していましたか?

戸崎 :いや、そういうことはなかったですけど、「いつかトップになりたい」という気持ちでやってきましたので。その時期が早かったか遅かったかは分からないですけど、うれしいです。やっぱり、内田(博幸)さんが大井にいらした頃は違いましたから。競馬で負けることが多くて、悔しいことが多々ありました。

赤見 :内田騎手の存在は、やっぱり大きかったんですね。その内田騎手は08年に中央へ移籍されました。

戸崎 :はい。内田さんの次に勝ち鞍があったのが自分だったので、内田さんが中央に移籍されてからは、責任というわけじゃないですけど、自然と「トップにならなきゃいけない」って思ってやってきたんです。

赤見 :改めて身が引き締まると言いますか。

戸崎 :そうです。また、能力のある馬にたくさん乗せていただいてもいましたので。そうなって当たり前じゃないかというのは、周りの人も多分思っていたと思うんですね。そこで自分としても、「ミスをしないように」「1つでも多く勝たなきゃ」というのはありましたね。

赤見 :今までで特に悔しかったレースってありますか?

戸崎 :川島正行厩舎に乗せてもらい出した頃のことですが、ナイキアディライトで大井のマイルグランプリに出た時。あの時は悔しかったですね。

赤見 :人気でもありましたよね。ご自身としてどの辺りが悔しかったんですか?

戸崎 :もう、自分に負けましたね。慌てちゃって、冷静に乗れなかったんです。本当、デビューしたてのあんちゃんが乗っているんじゃないかなというくらいの騎乗で。それが情けなくて…今でも覚えていますね。レースが終わってから泣きましたし。

赤見 :えっ? どこで泣いたんですか?

戸崎 :次のレースも騎乗予定だったので、下見所の陰で。そうしたら、内田さんに見つかりました。

赤見 :何て言われたんですか?

戸崎 :「こういうこともあるんだよ」って、「1つの経験だよ」って言われましたね。それを聞いたらもっと……(泣)。

赤見 :そうですよね。

戸崎 :「声かけないでくださいよ、早く泣き止みたいんだから」って思いました(笑)。そこが自分の中では、結構大きなターニングポイントでしたね。そこで成長したというのもあります。

赤見 :その内田騎手が中央に移籍され、戸崎騎手も05年から中央でも乗られるようになりました。最初は福島競馬場でしたが、いかがでしたか?

戸崎 :芝の反動がすごくまともに来るので、イメージとは違う感じを受けましたね。芝は気持ちがいいと聞いていたので、何かもっと柔らかくてふわっとしているのかなって思っていたんです。だから、「あ、こういう感じなんだ」ってびっくりしましたね。

赤見 :落ちる時も芝の方が痛いって言いますもんね。それからも騎乗数は年々増えて、10年の武蔵野Sで重賞初勝利、今年の安田記念でついにGI制覇と、中央でも存在感を見せつけていますが……中央はどれくらい意識されていますか?

戸崎 :毎週でも乗りたいですね。

赤見 :……毎週乗るようになるんですか?

戸崎 :それはたくさん聞かれるんですけど。いろいろクリアしなきゃいけないものがたくさんありますので。移籍するにしても試験がありますし。だから、1つの流れとしてそういう時が来たら、しっかり考えなきゃなと思っています。

赤見 :日本語が心配っておっしゃっていましたが、上手い切り返しです(汗)。

戸崎 :このことはたくさん聞かれますので(笑)。

赤見 :そうですよね。でも、そこが気になるんです。中央ファンの方にとっても、もう無視できない存在ですからね。自己分析で、自分のここを見てほしいというポイントはありますか?

戸崎 :どんな馬とも人馬一体になろうと心掛けていますので、競馬ではそういうところを見てもらいたいな思います。どういうコミュニケーションを取っているんだろうというのを、見てもらいたいですね。

赤見 :なかなか人馬一体になれるって難しいと思いますが、安田記念は。

戸崎 :なれたかなと、自分では思っています。リアルインパクトに聞いたら「ちょっと邪魔くさかったな」っていう答えが返ってくると思うんですけど(笑)。

赤見 :聞いてみたいですね(笑)。でもやっぱり、GIを勝ったのは大きかったんじゃないですか? あのワンチャンスを活かしたわけですし。

戸崎 :そうですね。地方の騎手でGIに乗せてもらうのも大変ですし、声がかかるというのがすごくありがたいですしね。また、あの日に地方の馬が中央に遠征していなければ、この機会もなかったですからね。いろんなことが噛み合ってくれて勝利できたというのは大きいですね。

赤見 :自分に何かご褒美はあげたんですか?

戸崎 :いや、ご褒美はないですね。また次のGIに挑戦、という感じです。

赤見 :奥様には?

戸崎 :は、したかな? いや、していないかな? 気持ちは伝わっていると思います。

赤見 :本当ですか(笑)!? でも、ご家族の存在は大きいんでしょうね。

戸崎 :それはもう、本当に大きいですね。やっぱり家庭が安心できるというのは。仕事に集中できるのはそこだと思いますので。そこは本当に感謝したいですね。

赤見 :すばらしい奥様ですね。

戸崎 :はい。クラーベセクレタより上の女性ですからね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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