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丸山元気騎手インタビュー中編

  • 2011年07月25日(月) 12時00分
初勝利は同期で最後だったものの、その年は後半だけで8勝を挙げ、翌年は92勝を挙げる大活躍。一気にブレークしました。デビュー3年目に入った今、騎手としての本音に迫ります。
<7/19.20に掲載したインタビューの続きです>

◆根本厩舎でなかったら

赤見 :勝ち星がついてくるまでは勝つことが第一目標だったと思いますが、勝ててくることで見えてきたこともあると思います。デビュー3年目を迎えて、今、騎乗で何を大切にしていますか?

丸山 :やっぱりスムーズさですかね。レースをスムーズに、リズム良く運べられれば、馬も走りやすいんじゃないかと思います。窮屈な競馬は馬がかわいそうですし、後遺症的に残るのでね。そこを考えながら乗っています。

赤見 :たとえば、それを無視したら勝てるということも?

丸山 :あります、あります。それはしょっちゅうありますよ。逃げたら勝てる馬はたくさんいるんですよ。でもやっぱり、先のことを考えたらそれだけではダメですからね。

赤見 :長い目で考えるのとその時だけとでは、違いますね。

丸山 :そうなんです。全然違うんですよね。それが最後のレースだったら仕方ないんですけど、そうでないなら、そこで少しは我慢しなくちゃいけないんじゃないかなと。次につながる競馬をしなくちゃいけないと、今は思っています。

赤見 :何だか去年インタビューさせてもらった時より、広い視野で競馬を見ている感じがします。

丸山 :そうですね。以前は「勝てればいい」と思っていたんですけど。やっぱり、未勝利や500万で終わってしまうのは、生産者の方や馬主さんにとってもうれしくないと思います。

赤見 :うんうん。

丸山 :3歳未勝利であがってしまう馬は、かわいそうだと思うんです。だから「どうにかして勝たせてあげたい」という気持ちが強い。「どうやったら馬が良くなるんだろう?」っていうことを考えていると、先々まで考えなくてはいけないなと。

赤見 :馬を育てるということを。

丸山 :そうですね。そういう面で調教師の仕事は面白そうだなというのはありますけど、やっぱり騎手もそういうことを考えなくちゃいけないですので。

赤見 :そういうふうに考えるようになったのは?

丸山 :やっぱり、自分が乗ってきた馬で重賞を勝ちたいですよね。もちろんテン乗りでも勝てたらうれしいですけど、自分が育てていった馬で勝てたら、もっと感動的というか。ちょっと、泣きたいじゃないですか(照笑)。

赤見 :ふふ(笑)。以前のインタビューで、お父さんとよく電話をするっておっしゃっていましたよね。調教が終わった後と競馬が終わった後に電話をして、アドバイスをもらったりするということでしたが、今は会話の内容も変わってきたんじゃないですか?

丸山 :でも、最近はもうしていないです。

赤見 :えっ、何で??

丸山 :んー、情けなくてできないんですよね。言われたことを素直に受け止められなくなってきたし…。なんなんだろうな? なんでなんだろう? いや、電話はしますよ。しますけど、前ほどじゃないですね。競馬でへぐる方が多いし、言われることも想像つくので。

赤見 :でも、へぐる方がみんな多いと思いますよ。

丸山 :うん、多いんですけど、ちょっともう、分かり切ったことをやってしまうので。たとえば、女馬は気性的にカッカするので、ダート戦で砂をかぶったら一度は綺麗なところに出さなくちゃいけないのに、それができなかったり、外を回りすぎてしまったり、「なんでここで抑えたんだろう」とか…。大概は乗っていて分かるのでね。そういうのがもう、嫌です。

赤見 :その時その時で、悩む内容が変わってきますね。若手騎手の悩むことのひとつに、所属かフリーかというのもあります。同期も5人中3人がフリーになっていますが、そこはどう考えていますか? あ、でも、根本(康広)先生と丸山騎手って似ていますよね?

丸山 :似ています!?

赤見 :似ています! 話が上手なところとか、明るいところとか。フリーになる予定はないんですよね?

丸山 :ないです。だって、フリーになったら攻め馬をさせてもらえるところが無くなっちゃいますもん。そうしたらお給料なくなって大変なことになっちゃいます(笑)。

赤見 :えっ、そこ(笑)? でも、根本厩舎に入って良かったと思いますか?

丸山 :思います、思います。これは本当に、冗談抜きで思います。他の厩舎に入っていたら、たぶん僕は全然伸びてないと思います。

赤見 :根本先生はすごくバックアップしてくださる感じですよね。

丸山 :本当にそうです。うちの先生は「(丸山元気を)よろしくお願いします」って、周りの方たちに言ってくださるので、自厩舎以外からも騎乗依頼をもらえるんです。先生の人柄ですよね。そうじゃないと、そのラインしか乗れなくなっちゃいますから。

赤見 :たしかにそれはありますね。それにトレセンって、狭い世界だけに難しさもあるじゃないですか。そこで、近くに味方してくれる方がいることは大きいですよね。

丸山 :そう。それは本当にありますよ。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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